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富山大学附属病院の先端医療

Q:脊椎疾患に対するロボット支援下手術とは

富山大学附属病院の先端医療

整形外科

Q:脊椎疾患に対するロボット支援下手術とは

川口善治/教授

Q:ロボット支援下手術が行われる脊椎疾患(腰部脊柱管狭窄症)とは?

A:60歳を過ぎる頃から、腰の骨(腰椎)には少しずつ老化現象が認められます。この老化現象によって、脊柱管と呼ばれる神経を通す管は狭くなっていきます。その結果、神経は周りから圧迫されるようになり、さまざまな症状を引き起こします。これが脊柱管狭窄症と呼ばれる病態です。具体的な症状としては、間欠跛行(長く歩こうとすると足がしびれて立ち止まってしまう症状)、足のしびれ、筋力低下、排尿が頻回になったり、うまくコントロールできずトイレまで間に合わなくなったりする、というものです。この脊柱管狭窄症が重症の場合は、背骨の一部を切除し、神経の圧迫を除去する手術(除圧術)が行われます。また、脊柱管狭窄症に背骨のぐらつき(不安定な状態)や、配列の乱れ(背骨がずれている状態)が起こっていると、除圧術のみでは効果が少ないため、固定術を併用することがあります。固定術は、背骨の中にボルトを打ち込み、これをつなぎ、さらに自分の骨を局所に移植することになります。これまで背骨にボルトを打ち込む方法は、背骨を手術する熟練した整形外科医が行っていました。しかし、この手技には、神経や血管を損傷する可能性が常に付きまとっていました。ここにロボットが導入されることになり、安全な位置へのボルトの打ち込みは可能なものとなりました。

Q:ロボット支援下手術はどのように行われるのですか?

A:医師は、患者さんの症状や画像所見から、手術適応と方法を決定します。この際には、患者さんに対して十分な説明を行います。患者さんから手術の同意を頂いたら、医師はその後レントゲン、CT、MRIなど画像診断といった方法で手術手技を確認します。この時、どの位置にボルトを入れるのが安全かを確かめます。同時にボルトの方向、長さも決定します。ロボット支援下手術では、ちょうど車のナビゲージョンのようにコンピューター画面上に、ボルトの刺入の安全な位置を観察することができます。実際の手術では、術前に計画した通りの場所にロボットのアームが術者を誘導し、これを用いて術者は安全にボルトを打ち込むことができます。このように、用いられるロボットはたいへん優れた機械です。

Q:ロボット支援下手術の治療経過を教えてください

A:腰椎の除圧術+固定術の場合、入院期間は約2週間程度です。これはロボットを用いない手術と大差ありません。術後は、翌日に血液が術野に溜まらないように術中に入れた管を抜きます。合併症がなければ、その後すぐに歩行は可能です。病棟やリハビリテーション部で歩行訓練を行っていただき、創の問題がないことを確認した後に退院となります。その段階でさらなるリハビリが必要であると判断した場合は、近くのリハビリ専門の施設に紹介させていただきます。また、ご自宅の都合で退院の準備ができない場合は、地域連携のスタッフが相談に乗ります。

Q:ロボット支援下手術は、どの程度普及しているのですか?

A:アメリカでは、約200台程度が稼働しています(2021年12月現在)。しかし、本機械の日本での導入は、富山大学附属病院が初めてであり(2016年11月)、テレビ取材を受けました。最先端の機械を用いて、患者さんに対して安全、安心な治療を目指したいと思い、導入を決定致しました。日本初ということで、内外からの問い合わせも非常に多くなっています。今後は、このロボットを使用した治療成績を、当大学病院から発信して参りたいと思っております。

私たち富山大学附属病院の整形外科医は、患者さんの言葉(症状)に熱心に耳を傾け、病態を正確に探り、適切な治療を行うように最大限の努力を行います。腰部脊柱管狭窄症は、非常に頻度が高く、日常生活が困難になる病気ですが、適切な治療により回復は見込めます。安全な治療によって、患者さんに健やかな生活をお送りいただき、日常の安心を提供したいと思っています。

図1:60歳代男性、腰部脊柱管狭窄症。

図1:60歳代男性、腰部脊柱管狭窄症。A:MRIを縦方向に見たもの。第3腰椎(L3)と第4腰椎(L4)および第4腰椎(L4)と第5腰椎(L5)の間の脊柱管狭窄がある。L4の前方すべりがある。神経は波打っているように見える。B:L3-4の水平方向のMRI。脊柱管狭窄がある。C:L4-5の水平方向のMRI。ここにも脊柱管狭窄がある。

図2:術後レントゲン。

図2:術後レントゲン。A:腰椎正面像。L3-4およびL4-5の除圧術+L4-5の固定術がなされている。B:腰椎正面像。L4のすべりは矯正されている。C:術後CT像。適切な位置へのボルトの刺入が行われている。

図3:今回、富山大学附属病院に日本で初めて導入されたロボットナビゲーションシステム

図3:今回、富山大学附属病院に日本で初めて導入されたロボットナビゲーションシステム

図4:術中のコンピューター画面

図4:術中のコンピューター画面

図5:ロボット支援下手術の術中写真

図5:ロボット支援下手術の術中写真

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