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富山大学附属病院の先端医療

Q:子宮頸がんの治療―子宮頸がん

富山大学附属病院の先端医療

産科婦人科

Q:子宮頸がんの治療―子宮頸がん

中島彰俊/教授

Q:子宮頸がんとは、どんな病気ですか?

A:子宮がんには、子宮頸がん(子宮がんの約5割)と子宮体がんがあり、子宮の出口にあたる子宮頚部からできるのが頸がんです。国内で1年間に子宮頸がんになる人は、約1万800人で上皮内がんは約2万1000人です(地域がん登録全国推計値2015年)。死亡者数が約2800人(人口動態統計2017年)です。子宮頸がんは、子宮がん検診により減少傾向でしたが、近年は緩やかな増加傾向にあります。また、子宮頚がん(上皮内がんを含め)の発症が、20歳代より急速に増加しており、若い女性に最も多いがんです。晩婚化も相まって、妊娠を契機に発見される方も増えており、この病気が若い世代の妊孕性(妊娠できること)に重大な影響を及ぼしています(図1)。

Q:子宮頸がんはどのように治療しますか?

A:治療法は主に3つの方法に分かれます。

1つ目は、子宮膣部円錐切除術で、子宮頚部の上皮内がんを疑う患者さんを対象に行います。子宮頸部のみを円錐状に切除することで、上皮内がんの部位をすべて切除することを目的とし、病変がすべて切除されている場合、治療は終了します(図2-①)。一方で、円錐切除の深さが深いと、妊娠時の早産と関係することも分かってきています。当科では将来の妊娠希望のある方には、患者さんに応じて切除の深さを浅くして、この手術を行っています。

2つ目の治療法は、手術療法(多くの方が広汎子宮全摘術)です(図2-②)。主に子宮頸がんⅡB期(子宮頸がんが子宮頸部周囲に少し広がった状態)までの患者さんを対象としています。手術後の主な合併症に、排尿障害や下肢リンパ浮腫があり、元の日常生活に戻ることへの妨げになっています。

当科では、排尿障害の起こりにくい手術の工夫を行うことや、リンパ浮腫外来を開設しリンパ浮腫の予防に努め、治療後の日常生活への復帰を支援しています。また、病気の進行具合に応じ、手術後に放射線治療を追加する必要が出てきます。その場合、閉経前の方には卵巣温存術、移動術(放射線からの影響を避けるため)を手術中に行っています(進行具合によっては、できない場合もあります)。

3つ目の治療は、放射線治療を含む集学的治療(化学療法などを併用した総合的治療)です(図2-③)。この治療は、主にⅢA期以降(手術だけで子宮頸がんの完全切除が困難な状態)の患者さんが対象となります。この病期の子宮頸がんへの標準治療は、放射線治療(同時化学放射線療法を含む)です。一方で、それだけでは治療困難な患者さんが多くなります。

当科では、標準治療を中心に化学療法および分子標的薬治療(ベバシズマブ:アバスチン®)を併用した治療を積極的に行っています。

Q:子宮頸がんにならないために、気をつけることはありますか?

A:ヒトパピローマウイルス(HPV)は性行為によって感染します。しかし、その感染はほとんどの人に起こるものの、HPV感染の多くは自然に消えてなくなります。一方で、何らかの原因でHPV感染が子宮頚部に“居着く”ことによって、将来的にその一部の方に子宮頸がんを引き起こします(HPV検査陽性=がん、ではありません)(図3)。

若い方でも「がん検診を受ける」ことが最も大事です。また、子宮頚がんの発症原因が、HPVの子宮頚部への持続感染によるので、HPV検査の併用により将来的な子宮頸がんの危険性を予測することが可能です。細胞診とHPV検査を受けることで、がんの見逃しは非常に少なくなることも分かっています。HPV検査は子宮頸がん検診との併用で、富山県健康増進センター(http://www.kenzou.org/)で行っていますので(別途申し込み必要)、そちらもご利用下さい。

一言メモ

子宮頸がんは、そのワクチンを適切な時期に摂取することにより、発症の約88%が抑制できるがんの1つです。世界保健機関(WHO)は、子宮頸がん排除戦略として、①HPVワクチン接種、②子宮頸がん検診、③その後のケアにより、多くの子宮頸がんを予防できると推定しています。皆さんもまずは、子宮頸がん検診を始めてみませんか?

図1:子宮頸がん罹患数:年齢階級別(2012年)

図1:子宮頸がん罹患数:年齢階級別(2012年)

図2:子宮頸がんの治療

図2:子宮頸がんの治療

図3:がん検診とHPV検査

図3:がん検診とHPV検査

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