富山大学附属病院の先端医療
Q:乾癬の治療の幅が広がった―バイオ製剤の導入―乾癬
牧野輝彦/診療教授
Q:乾癬(かんせん)って、どんな病気?
A:乾癬は、慢性の経過をとる皮膚疾患です。典型的な症状として、銀白色のカサカサ(鱗屑(りんせつ))が付着する赤い発疹(紅斑(こうはん))が、主に頭皮や体幹、四肢に生じる病気です(写真)。国内の患者数は、10万人以上といわれています。男女比は2対1で、男性に多く男性では30歳代、女性では10歳代と50歳代での発症が多い傾向です。乾癬は症状によって、尋常性乾癬、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬、関節症性乾癬の5つに分類されます。乾癬の原因については、さまざまな研究が進んでいますが、まだ解明されていません。乾癬になりやすい体質があり、そこに感染症や精神的ストレス、薬剤などの要因が加わり発症すると考えられています。糖尿病や高脂血症、肥満なども乾癬に影響すると言われています。
なお、乾癬になりやすい体質は遺伝すると言われていますが、必ずしも発症するわけではなく、親が乾癬の場合、子どもが乾癬を発症するのは5%程度と言われています。また、「かんせん」という名前から誤解されやすいのですが、他人に感染する病気ではありません。
Q:乾癬はどのように治療するのですか?
A:乾癬の治療方法は、大きく分けて外用療法、光線療法、内服療法、バイオ製剤の4種類あります(図1)。患者さんの症状や生活スタイルに合わせて、これらの中から治療法を選択していきます。
外用療法は乾癬の治療の基本であり、主に炎症を抑えるステロイド外用薬と、皮膚の表皮細胞の増殖を抑えるビタミンD3外用剤が使われます。最近はこの2剤があらかじめ混合されている製剤も使われています。
外用療法だけでは良くならないときや、発疹の面積が広くなったときには光線療法が用いられます。以前より光に対する感受性を高める薬剤を内服、あるいは外用してから長波長紫外線(UVA)を照射する「PUVA療法」が行われていましたが、最近では、中波長紫外線(UVB)に含まれる有害な波長を取り除き、治療効果の高い波長のみを照射する「ナローバンドUVB療法」が一般的になってきました。また、治りにくい部位などにはターゲット型エキシマランプも用いられます。
内服療法には、皮膚の細胞の過剰な増殖を抑えるレチノイド(ビタミンA誘導体)と、免疫反応を抑えるシクロスポリンがあります。さらに近年、細胞内cAMP濃度を上昇させ、炎症反応を抑制するアプレミラストや、関節リウマチに用いられていたメソトレキセートも乾癬の治療薬に加わりました。これらの治療で効果が見られない患者さんには、バイオテクノロジーを用いて開発された「バイオ製剤」が用いられます。
Q:バイオ製剤による乾癬の治療とは?
A:バイオ製剤は、体の免疫機能などにかかわる物質である「サイトカイン」の働きを弱める薬です。乾癬の症状と関係していることが明らかになったサイトカインとして、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン23(IL-23)、IL-17があります。これらはいずれも免疫機能に関わる重要なサイトカインですが、過剰に増えることで炎症を起こします。バイオ製剤は、これらのサイトカインをターゲットにしています。
現在、国内では8種類のバイオ製剤を乾癬治療に用いることができます。インフリキシマブとアダリムマブはTNF-αを、ウステキヌマブ、グセルクマブとリサンキズマブはIL-23を、セクキヌマブとイキセキズマブはIL-17Aを、ブロダルマブはIL-17受容体を標的としています(図2)。いずれのバイオ製剤も従来の治療方法で効果が得られなかった患者さんにも十分な効果が得られます。バイオ製剤が効果を発揮することで、皮膚症状がほぼ完全に消失し、日々の治療の負担の軽減や、日常生活における活動の制限やストレスの軽減も期待されます。
しかし、バイオ製剤の効果が十分得られない場合や、副作用が現れる場合もあり得ます。そのため、私たち皮膚科専門医は、日本皮膚科学会の定めた治療指針に基づいて、患者さんの安全性を確保した上で適切に使用するように努めています。
一言メモ
- 乾癬は落屑を付着した紅斑を特徴とする慢性の皮膚疾患です。
- 外用療法、光線療法、内服療法、バイオ製剤から症状や生活スタイルに合わせて治療法を選択します。
- バイオ製剤により乾癬治療は大きく変わり、患者さんのQOLの向上にも貢献しています。
0〜9
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