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富山大学附属病院の先端医療

Q:頚椎症性脊髄症の診断と治療―頚椎症性脊髄症

富山大学附属病院の先端医療

整形外科

Q:頚椎症性脊髄症の診断と治療―頚椎症性脊髄症

川口善治/教授

Q:頚椎症性脊髄症とは?

A:首(頚椎)には脳から続く脊髄という中枢神経があって、これが脊柱管という管の中を通っています。頚椎症性脊髄症とは頚髄症とも言いますが、この管が狭くなって脊髄が圧迫され、さまざまな症状を引き起こす病気のことです。60歳以上の方に多くみられ、年齢の変化(老化現象)が原因と考えられています。

脊柱は椎体という骨、椎間板という軟骨より成り立っています。このうち椎間板に老化現象(変性)が起こり、少しずつ管を狭め、その結果、脊椎が圧迫されるようになります。特にもともと脊柱管が狭くなっている方は、少しの変性が起こっただけでも頚髄症をきたしやすくなります。

Q:頚椎症性脊髄症の症状と診断とは?

A:本疾患の症状として重要なものは、4つあります。①手足のしびれ:ピリピリやチクチクするような異常な感覚、②手指の巧緻運動障害:手の使い勝手がぎこちない、ボタンのはめはずしがしにくい、箸が使いづらい、字がうまく書けない、など、③歩行障害:足がつんのめって歩きにくい、スムーズに足が前に出ない、階段で手すりを使わないと落ちそうで恐ろしく感じる、など、④膀胱直腸障害:おしっこをする際、勢いが弱い、出るまでに時間がかかる、たまに漏らしてしまう、など。これらが代表的症状です。

診察する医師は、話を聞いて、実際に神経の症状が現れているかを診察で確かめます。その後レントゲン、CT、MRIなど画像診断といった方法で脊髄の圧迫があるか、診察で得られた所見と画像所見が一致するかを確かめ、確定診断をしていきます。

Q:頚椎症性脊髄症の治療を教えてください

A:症状の深刻さによって治療法は変わります。症状が軽度で、日常生活上問題がない場合は、経過を観察します。その際も数か月に1度は診察が必要です。経過中に症状の変化があれば、すぐにでもご連絡ください。症状が強く、日常の生活に困難をきたす場合は手術を行います。薬で治癒することは見込めず、残念ながらこの病気に対する特効薬はありません。ただし、手術を計画する場合も患者さんには、十分にご説明しますので安心してください。手術は首の前から行う方法と、後ろから行う方法があり、病態によって使い分けています。詳細は主治医と相談してください。

いずれの手術も、重篤な合併症を生じる危険性は極めて少なく、長期にわたる成績も安定しています。術後は約1〜2週間で退院となる予定です。当院では、年間約100例の患者さんに頚椎の手術を行っています。

Q:予防法について

A:年齢の変化(老化現象)が原因ですので、これを防ぐ手立ては今のところありません。しかし、何もしないでいると筋肉が痩せ、骨が衰えます。天気の良いときは外に出て日光浴をしながら、軽いウオーキングをお勧めします。元気な体を保つことによって、病気に打ち勝つ心構えをしていただきたいと思っています。

私たち富山大学附属病院の整形外科医は患者さんの言葉(症状)に熱心に耳を傾け、病態を正確に探り、適切な治療を行うように最大限の努力を行います。頚髄症はともすれば重篤な神経の症状を引き起こす病気ですが、適切な治療によって患者さんに健やかな生活をお送りいただき、日常の安心を提供したいと思っています。

図1:頚椎(首)を横から見たMRI。①の部分では脊髄の圧迫はない状態です。②の部分では脊髄が蛇行しているように見え、圧迫が起こっている状態です。

図1:頚椎(首)を横から見たMRI。①の部分では脊髄の圧迫はない状態です。②の部分では脊髄が蛇行しているように見え、圧迫が起こっている状態です。

図2:図1-①で頚椎(首)の輪切りを切ったMRI。脊髄は楕円形をしており、周りから圧迫は受けていません。

図2:図1-①で頚椎(首)の輪切りを切ったMRI。脊髄は楕円形をしており、周りから圧迫は受けていません。

図3:図1-②で頚椎(首)の輪切りを切ったMRI。脊髄は三角形をしており、周りから圧迫を受けています。

図3:図1-②で頚椎(首)の輪切りを切ったMRI。脊髄は三角形をしており、周りから圧迫を受けています。

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