富山大学附属病院の先端医療
Q:口腔機能(話す、食べる、飲み込む)障害の回復(ハビリテーション・リハビリテーション)―構音障害、摂食・嚥下障害
藤原久美子/診療准教授
Q:話す、食べる、飲み込む障害にはどのようなものがありますか?
A:口には、話をしたり食べ物を食べたり、といった日常的に大切な役割があり、それらをまとめて口腔機能といいます。口腔機能がうまく働かない状態、例えば、ミルクがうまく飲めない(哺乳障害)、言葉が上手に話せない(構音障害)、食べにくい・飲み込みにくい(咀嚼・嚥下障害)といった症状は、口腔機能障害と言います。先天的に舌の動きが悪い(舌小帯縮小症)場合や、のどの筋肉に問題がある(口蓋裂)場合には、経過を見ながら外科的手術を行い、成長とともに離乳食指導や言語訓練を行います。
これらの治療は、新たな機能を獲得するという意味で”ハビリテーション“と呼ばれます。また、口の中にがんなどの病気がある場合は、舌やあごの骨を広範囲に切除する必要があり、治療後には構音障害や咀嚼・嚥下障害を生じてしまいます。そこで機能を回復するための“リハビリテーション”として、金属プレートや自分の体の中から採取した骨を用いた顎の再建術や入れ歯の作成を行い、その後、話す訓練や食べる練習を行います。
Q:構音障害の検査や治療には、どんなものがありますか?
A:どのような言葉がうまく話せないのか、口の中のどの部分に障害があるかを言語聴覚士(ST)が中心となって診査します。
言葉を直接聞いて、聴覚的に判定するだけでなく、ナゾメーター(写真1)やファイバースコープなどの器械を使用して、障害の程度や部位を客観的に診断することができます。そこで動きの悪い部分を特定し、重点的に運動訓練を行ったり、動きを補う装置(発音補助装置など)を装着したりして、言葉の練習を行います。このような装置は、専門的な知識を持った歯科医師が作成し調整をします。子どもの場合には発達検査を行い、身体的・精神的発達に応じた訓練を遊びの中で行えるよう保護者に指導します。
Q:咀嚼・嚥下障害の検査や治療には、どのようなものがありますか?
A:小さいお子さんの咀嚼・嚥下障害では、実際に使っているスプーンや離乳食を持参してもらい、食べるところを観察します。離乳食は月齢で選ぶことが多いですが、口腔機能の発達にあわせたものを与える必要があり、スプーンの形や口へ入れる角度でも食べ方が改善するので、実際の指導が重要となります。
成人以降の咀嚼・嚥下障害は、加齢による筋力低下だけでなく、長い手術や入院などの大きな病気の後でも食べる力が弱くなることがあります。また脳梗塞などの後遺症で口腔機能全体に障害が生じることがあり、各科と連携して病状をみながら対応します。検査としては、VF(透視造影検査、写真2)、咀嚼機能検査(写真3)、舌圧検査(写真4)などを行います。入れ歯の作成など歯の治療を行ったのち、飲み込みやすい姿勢や食事の形態を調整しながら指導を行います。
一言メモ
話す、食べる、飲み込む障害に対し「口腔機能発達不全症」、「口腔機能低下症」といった病名が新設され、これらを検査する機材も開発されました。乳児期から老齢期まで、口に関する障害はさまざまです。気になることがあれば、歯科医師に相談するのがよいでしょう。
0〜9
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