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富山大学附属病院の先端医療

Q:頭頸部がんの治療―頭頚部がん

富山大学附属病院の先端医療

耳鼻咽喉科

Q:頭頸部がんの治療―頭頚部がん

松浦一登/診療指導医 (国立がん研究センター東病院 頭頚部外科)

Q:頭頸部がんとは、どんながんですか?

A:頭頸部とは、脳と眼球を除いた首から上のすべての領域を意味します(図1)。この領域には、飲むこと、食べること、息をすることといった生きるために必要不可欠な機能と、話すことや聴覚・味覚・嗅覚などの感覚、顔かたちなどの生活の質にかかわる機能が併せて存在しています。こうした部位に生じるがんを、頭頸部がんと呼びます。

頭頸部がんというのは総称で、口唇・口腔がん(舌がんもこの中に含まれます)、咽頭がん、喉頭がん、鼻・副鼻腔がん、唾液腺がん、および甲状腺がんに分かれています(図2)。また、耳や頭蓋底のがん、首の位置にある食道がんなどもあります。頭頸部がんは、日本人のすべてのがんの4%程度を占めていますが、飲酒・喫煙・ヒトパピローマウイルスなどがその発生に深く関与しており、近年増加傾向にあります(図2)。

頭頸部領域にがんができると、部位ごとにさまざまな症状が現れてきます。口腔がんでは、なかなか治らない潰瘍(口内炎と間違えられることがあります。写真1)やしこり、痛みなどがあり、咽頭がんでは嚥下時痛や血痰がみられます。喉頭がん(写真2)では声枯れ(嗄声)が一番多い症状であり、鼻・副鼻腔がん(写真3)では、繰り返す鼻血や頬の腫れ、鼻詰まりなどが認められます。また、首の腫れ(リンパ節転移)で、がんが発見されることも珍しくありません。こうした症状が続くときは、ぜひ耳鼻咽喉科や頭頸部外科を受診してください。

Q:頭頸部がんにはどんな治療を行いますか?

A:がん治療では、生命予後(生命維持の見通し)の向上が最も重要ですが、機能の温存(摂食・嚥下、呼吸・構語など)も大切であり、これらの両立を高いレベルで行うことが必要です。

治療手段として、手術療法・放射線療法・化学療法(抗がん剤治療)があり、これらを組み合わせて最適な治療を計画します。最近では、遺伝子解析から次々と新たな薬が開発され、免疫療法が第4の柱として開発されてきました。そのため、頭頸部がん治療はそれぞれの専門家が力を合わせてチーム医療を行うことが求められます。

私たち耳鼻咽喉科・頭頸部外科医のみならず、放射線科医、腫瘍内科医、消化器内科医、皮膚科医、歯科医、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、管理栄養士など多職種がかかわっています。こうしたメンバーを組めるのは大学病院ならではの強みといえます。私たち耳鼻咽喉科・頭頸部外科医は頭頸部領域の専門家としてさまざまな機能に精通しており、この領域のがんを適切な方法を用いて治すために、チームの中心となって治療を行っています。

Q:国内のがん専門施設との連携はありますか?

A:富山大学附属病院耳鼻咽喉科は、専攻医の専門研修プログラムにおいて、宮城県立がんセンター頭頸部外科と提携を結んでいます。当施設は治療のみならず、併設されている研究所での頭頚部がん研究も盛んに行われており、東北大学の大学院講座(頭頸部腫瘍学講座)も兼ねています。

一方で、日本の頭頸部がん治療のメッカとされる国立がん研究センター東病院頭頸部外科とも交流しています。機能温存治療を得意としており、喉頭がんにおける喉頭部分切除や口腔・咽頭がんに対する喉頭温存手術などを積極的に行っています。紹介により東病院での治療が受けられるのみならず、症例によっては松浦(科長)が診療支援に訪れています。

一言メモ

  1. 頭頸部がんは、日本人の全がんの4%程度を占めています。
  2. 飲酒・喫煙・ヒトパピローマウイルスなどがその発生に深く関与しており、近年増加傾向にあります。
  3. 生命予後の向上と、機能の温存の両立を、高いレベルで行うことが必要です。
  4. 耳鼻咽喉科・頭頸部外科医は多職種チームの中心となって治療を行っています。
図1:頭頚部の名称

図1:頭頚部の名称

図2:頭頚部がんの内訳

図2:頭頚部がんの内訳

写真1:舌がん(右舌縁にしこりと潰瘍が生じています)

写真1:舌がん(右舌縁にしこりと潰瘍が生じています)

写真2:咽頭がん(右声帯に腫瘍が認められます)

写真2:咽頭がん(右声帯に腫瘍が認められます)

写真3:上顎がん(右上顎洞を占拠する腫瘍が認められます)

写真3:上顎がん(右上顎洞を占拠する腫瘍が認められます)

写真4:国立がん研究センター東病院と宮城県立がんセンター

写真4:国立がん研究センター東病院と宮城県立がんセンター

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