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富山大学附属病院の先端医療

Q:鼻閉改善手術―鼻閉改善手術

富山大学附属病院の先端医療

耳鼻咽喉科

Q:鼻閉改善手術―鼻閉改善手術

髙倉大匡/講師

Q:鼻閉について教えてください。

A:鼻閉は、いわゆる鼻づまりのことで、普通の状態で鼻呼吸をしているときに、鼻を通る空気の量が不十分と感じる感覚のことです。鼻呼吸が障害されると、日常生活上の支障や精神的苦痛が引き起こされ、においの障害や睡眠障害との関連も指摘されています。鼻閉には、アレルギーや感冒などの炎症や薬剤の影響で鼻の粘膜が腫れて生じる機能性鼻閉と、鼻腔の形態異常や腫瘍・ポリープなど鼻呼吸の通り道が狭くなる器質的鼻閉があります。器質的鼻閉や機能性鼻閉の一部では、手術が非常に有効な治療となります。

Q:鼻閉を改善する手術はどのようなことをするのでしょうか?

A:鼻中隔彎曲症は,鼻閉を引き起こす代表的な鼻の形態異常です(図1)。鼻中隔は左右の鼻腔を分けている、軟骨・骨と粘膜で構成される板状の構造です。個人差がありますが、成長過程で徐々に曲がっていきます。これがひどくなると、下鼻甲介(鼻腔の外側から起こる骨の盛り上がった部分)の肥大も伴い両側の鼻腔全体の形にゆがみが生じます。また鼻腔形態異常にアレルギー性鼻炎を合併すると、さらに鼻の粘膜が腫れ上がり、重度の鼻閉に悩まされることになります。このような鼻腔形態異常による鼻閉に対して、耳鼻咽喉科では、以前から鼻中隔矯正術(鼻中隔の彎曲した骨や軟骨の一部を切除し矯正する手術)と下鼻甲介切除術(下鼻甲介を減量して鼻の空気の通り道を広げる手術)が行われてきました。

Q:富山大学で行っている手術はどのようなものでしょうか?

A:当科では、患者さんの手術負担をできるだけ少なくするために、超音波骨メスと呼ばれる特殊な機器を使用し、下鼻甲介の粘膜を温存しつつ骨だけを切除する手術を行っています(図2)。超音波骨メスは、片手で骨削開・吸引・洗浄ができる機器で、周囲の血管や神経を温存し骨だけを破砕できます。この結果、下鼻甲介の骨切除において、治療効果は従来法に劣らず、手術時間が短縮(従来法の約3分の2)し、術中出血の頻度も大幅に減少いたしました。本手術では、下鼻甲介骨切除とは別に、粘膜の中の知覚・鼻汁分泌神経を切除することで、アレルギー性鼻炎のくしゃみ・鼻水も改善することができます。

また、従来の鼻中隔矯正術では鼻閉改善効果に乏しい外鼻(顔の外に突出した、主に軟骨で構成されている部分)の変形が原因の鼻閉に対しては、鼻中隔外鼻形成術(SRP)も併施しています(図3)。SRPでは、一部外鼻の皮膚切開が必要となりますが、外鼻の構成軟骨を分離し、鼻中隔軟骨の一部を採取して整形・移植することで外鼻形態の矯正・補強を行います。当科データでは、鼻閉の自覚的強さのスコア(20点満点)が術前平均10点から術後平均2.5点(6ヶ月時点)に改善し、鼻腔通気度検査(鼻の通り具合を数値で表示する機械)では、鼻呼吸の抵抗値が低下し、左右バランスも改善しました。術後の外鼻の形の変化や切開痕を気にされる方もおられますが、術後6ヶ月での手術満足度評価(4:大いに満足、3:満足、2:どちらでもない、1:不満 0:大いに不満)は、“鼻の外見”に関して平均3.5であり、高い満足度も得られております。SRPは形成外科的な手術ですが、耳鼻咽喉科ではあくまで鼻呼吸を改善するための手段として行っています。

鼻閉を起こす要因やその重症度は、患者さん個々で異なります。当科では、鼻閉の要因や重症度を的確に評価し、原因に応じた適切な治療法や手術術式を選択することで、患者様に生活の質の改善を実感していただけるように診療を行っております。

図1: いろいろな鼻中隔彎曲症

図1: いろいろな鼻中隔彎曲症

(飯沼壽孝:新耳鼻咽喉科学,鼻中隔彎曲症,南山堂,東京,302,1998 より引用)

図2:超音波骨メス(ソノペットST2001、ストライカー社製)

図2:超音波骨メス(ソノペットST2001、ストライカー社製)

(日本ストライカー株式会社製品カタログ より引用)

図3:鼻中隔外鼻形成術の手術手技

図3:鼻中隔外鼻形成術の手術手技

(児玉.日耳鼻118:1406-1413,2015より引用改変)

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