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富山大学附属病院の先端医療

Q:うつ病の診断と治療―特に難治例への対応―うつ病

富山大学附属病院の先端医療

神経精神科

Q:うつ病の診断と治療―特に難治例への対応―うつ病

樋口悠子/診療准教授

Q:うつ病とは、どんな病気ですか?

A:うつ病は、1日中気分が落ち込んでいることや何をしても楽しめないことなど(うつ状態)が続く病気のことです(図1)。あらゆる年齢でみられ、働けなくなる、自殺の危険性が高くなるなど、人の生活に大きな影響を及ぼす疾患であり、早期に適切に診断して治療することが重要です。生涯有病率(うつ病にかかる人の割合)は3〜7%と報告されており、ありふれた病気といえます。原因はまだはっきりとは分かっていませんが、ストレスや身体疾患、環境変化など、さまざまな要因が絡み合って、脳内神経伝達物質(主にセロトニンとノルアドレナリン)の働きが低下することによって発病すると考えられています。うつ病の診断は、問診で症状を確認することにより行います。ほかの精神疾患(双極性障害、適応障害、統合失調症など)でもうつ状態が出現することが度々あり、診断基準に照らし合わせ、時には経過をみながら判断します。

また、体の病気や薬(脳血管障害、甲状腺疾患、ステロイドなど)が原因となることもあるため、血液検査や脳の検査を行い、ほかの病気を除外した上で診断を行います。

Q:うつ病は、どのように治療するのですか?

A:治療の基本は、休養と薬物療法です。患者さんには「怠け」ではなく「脳の病気」であることを説明し、積極的に心身の負担を減らすように心がけてもらいます。必要に応じて、医師あるいは産業医が休職(休学)診断書を発行します。

薬物療法としては、抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬など)が中心で、脳内神経伝達物質のバランスを整えることを目指します。効果が不十分な場合は、抗うつ薬の効きめを増強する作用のある薬剤(気分安定薬、抗精神病薬、甲状腺ホルモン製剤など)を追加します。

また、近年、認知行動療法の有効性が報告されています。それぞれの治療法には、症状、経過、重症度、病気のタイプなどにより効果に大きな違いがあるので、患者さんと相談の上、医師が最適な方法を選択します。状態によっては、入院して集中的に治療を行うことを勧める場合もあります。

Q:難治性うつ病の治療について教えてください。

A:標準的な治療を行っても、残念ながら効果が得られない患者さんが30%の割合で存在すると言われています。このような難治性うつ病に対して、当院では以下のような電気刺激による治療(ニューロモデュレーション治療)を行っています。入院治療で対応しており、1〜2か月の入院期間が必要です。

・修正型電気けいれん療法(写真、図2、3)

重度のうつ病で、焦燥感がきわめて強い場合、食事が全く摂れない場合、自殺のリスクが高い場合、副作用で薬物療法が継続できない場合などに行うことの多い治療法です。このような緊急性の高い患者さんにも、速やかな効果を発揮する点で優れています。当院では、手術室で麻酔科医の協力を得て、全身麻酔下にて安全に行っています。

方法としては、安全性が高いパルス波治療器(サイマトロン®)を使用し、週に2〜3回行い、効果をみながら計6〜10回程度繰り返します。必要に応じて、維持療法として1週間〜1か月に1回の割合で継続することもあります(図3)。

一言メモ

  1. 日本人の3〜7%がうつ病にかかるといわれています。
  2. うつはさまざまな原因により起こるため、専門医による適切な診断が必要です。
  3. 治療の基本は、休養と薬物療法です。
  4. 難治性の患者さん(約30%)でも、電気けいれん療法が効果を発揮する場合があります。
図1:うつ病でみられやすい症状(DSM-5大うつ病性障害:基準Aより)

図1:うつ病でみられやすい症状(DSM-5大うつ病性障害:基準Aより)

図2:電気けいれん療法

図2:電気けいれん療法

図3:治療スケジュール

図3:治療スケジュール

写真:パルス波治療器(サイマトロン®)米国ソマティックス社(光電メディカルホームページより)

>写真:パルス波治療器(サイマトロン®)米国ソマティックス社(光電メディカルホームページより)

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