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富山大学附属病院の先端医療

Q:網膜剥離と黄斑疾患の手術治療―網膜剥離、黄斑疾患

富山大学附属病院の先端医療

眼科

Q:網膜剥離と黄斑疾患の手術治療―網膜剥離、黄斑疾患

柳澤秀一郎/診療准教授

Q:網膜や黄斑とは何ですか?

A:網膜は、眼球内壁に張り付いている神経の膜です。光を感じて、その情報を脳に伝え映像として見ることができます。網膜の中央には黄斑があり、視力や色覚を担っています。黄斑以外の網膜は、視野や暗所での視力を担っています。黄斑が障害されると視力低下やゆがみ(変視症)を生じます。

Q:硝子体手術とはどんな手術ですか?

A:硝子体は、眼球内の大半を占めるゼリー状の物質です。加齢や病気によって構造が変化し、網膜の病気を引き起こすことがあります。硝子体を取り除き、網膜に処置を施すのが硝子体手術です。最近は、立体(3D)画像システムによって、高解像度でより安全な手術が可能であり、当院では2台使用しています。手術は通常局所麻酔で、白内障があれば同時に手術を行い、30〜90分程度で終わります。

Q:網膜剥離の症状や、治療法を教えてください

A:硝子体が縮むと、網膜が引っ張られ、その際に光が走って見えます(光視症)。さらに網膜に穴(裂孔)があくと、細胞が眼内に放出されゴミが飛んで見えます(飛蚊症)。生理的な飛蚊症と異なり、数が増えたり広がったりなど、自覚症状が悪化するようなら網膜剥離の可能性があります。網膜剥離が起こると、視野異常が出現し、進行すると視野欠損の拡大、さらに黄斑がはがれると、変視症や視力低下をきたします。若い人では、網膜剥離の進行が遅いため、自覚症状が出にくい場合があります。

治療は、網膜裂孔だけならレーザー(光凝固)で治療し、網膜剥離に至っていると手術になります。若い人では、主に眼球壁にスポンジを縫い付ける方法が取られ、中高年では硝子体手術で治療します。硝子体手術後は、眼内にガスを入れておき、うつ伏せや横向きの体勢で安静にします。当院では、95%以上は1回の手術で治り、最終的にはほとんどの網膜剥離は復位しています。網膜剥離が治れば視野は回復し、徐々に視力も変視症も良くなります。網膜剥離では早期に手術を行うことが、より良い見え方を保つために重要です。

Q:手術によって治療できる黄斑の病気を教えてください

A:頻度が高いものとしては、黄斑前膜や黄斑円孔があります。いずれも加齢に伴って起こる病気です。黄斑前膜は、黄斑の表面にうすい膜が張り付いた状態です。

初期は無症状ですが、進行すると黄斑が牽引され、変視症や視力低下をきたします。治療は硝子体手術によって、余分な膜を取り除きます。その際、網膜表面の内境界膜という透明な膜も同時に取り除くことで、黄斑前膜の再発を予防します。症状が軽いうちに治療をした方が、変視症や視力の改善効果がより期待できます。

硝子体と黄斑の接着が強いと、硝子体に引っ張られ黄斑の中央に穴があき(黄斑円孔)、変視症や視力低下をきたします。黄斑円孔が小さければ、硝子体手術によってほぼ100%閉鎖できます。黄斑円孔が大きい場合は、網膜表面の内境界膜を裏返してかぶせることで閉鎖を促します。網膜剥離と同様に、眼内にガスを入れて手術を終えますので、術後うつ伏せなどの体位制限が必要です。

当院では、ほぼすべての黄斑円孔は手術によって閉鎖することができます。黄斑円孔が閉鎖すれば視力改善も期待できます。

一言メモ

  1. 網膜剥離や黄斑の病気の多くは、硝子体の加齢性変化がかかわっています。放置すると視機能の回復に支障をきたすため、早期治療が重要です。
  2. 近年の硝子体手術は、器械や手術方法の日々の進歩によって安全で質の高い治療を提供することが可能です。
写真1:上は正常な眼底写真(中央に黄斑が位置する)。下は黄斑の断面構造

写真1:上は正常な眼底写真(中央に黄斑が位置する)。下は黄斑の断面構造

写真2:網膜剥離の眼底写真。複数の網膜裂孔と黄斑に迫る網膜剥離

写真2:網膜剥離の眼底写真。複数の網膜裂孔と黄斑に迫る網膜剥離

写真3:黄斑に張り付いた黄斑前膜の収縮により、黄斑が変形

写真3:黄斑に張り付いた黄斑前膜の収縮により、黄斑が変形

写真4:上は黄斑円孔。下は手術によって閉鎖した黄斑円孔

写真4:上は黄斑円孔。下は手術によって閉鎖した黄斑円孔

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