富山大学附属病院の先端医療
Q:大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療は進歩した?―経カテーテル的大動脈弁留置術
牛島龍一/助教、 上野博志/講師
Q:大動脈弁狭窄症とは、またその治療法は?
A:大動脈弁は、心臓の左心室と大動脈の間にある扉です(図1)。この扉が開きにくくなり、十分な血液を全身に送り出すことができなくなる病気が、大動脈弁狭窄症(AS)です(図2)。狭窄の程度が高度になると、胸痛や失神、呼吸困難などの症状が出現する、予後が非常に悪い病気です。
硬化した大動脈弁を柔らかくする薬剤はなく、大動脈弁狭窄症が重症になれば、大動脈弁を人工弁に置き換える治療が必要になります。1つの方法は、外科手術(大動脈弁置換術(SAVR):胸の真ん中を切開し、人工心肺を開始してから心臓を止め、硬くなった弁を取り除いて人工弁に置き換える手術)です。
もう1つの治療法は、カテーテル治療(経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI):カテーテルに人工弁を乗せて大動脈弁まで運び、硬くなった大動脈弁の内側に人工弁を留置する手術)になります。カテーテルの挿入経路としては、足の付け根から行う経大腿アプローチが最も低侵襲で第一選択ですが、足の血管が細い等の理由で治療に適さない場合は、経心尖アプローチなどで治療を行います(図3)。TAVIは、人工心肺を使用しない、心臓を止めない、経大腿アプローチであれば胸を切開しないといった特徴から、体への負担が少なく、入院期間が短いというメリットがあります。多くの患者さんで、安全に外科手術を受けていただくことが可能ですが、大動脈弁狭窄症は高齢者に多いため、脳卒中や呼吸器疾患、腎疾患などを合併する方も多く、3割以上の方が手術に耐えられないと判断されます。概ね80歳以上、もしくはその他の病気のため手術リスクが高い方がTAVIの対象となります。
TAVIで使用する人工弁には、風船で広げる(バルーン拡張型)SAPIEN3と、形状記憶合金の力で広がる(自己拡張型)Evolutシリーズの2種類があり、患者さんの病態に合わせて、より安全で効果的な人工弁の選択が可能となっています(図4)。
Q:TAVIの適応がない大動脈弁狭窄症はありますか?
A:日本でTAVIが始まった時点では、二尖弁(通常3枚ある大動脈弁を形づくる薄い膜(弁葉)が生まれつき2枚の患者さん)や外科的人工弁機能不全(生体弁が劣化して大動脈弁狭窄症や閉鎖不全症を起こす)、透析中の大動脈弁狭窄症にはTAVIを行うことができませんでした。しかし、人工弁自体の改善や治療手技の改善、新しい知見が積み重なった結果、現在では、いずれの患者さんに対してもTAVIが可能となりました。特に透析患者さんに対するTAVIは、2021年についに認可されました(2021年11月現在、SAPIEN3のみ使用可能)。ただ透析患者さんに対するTAVIが実施できる施設は限られており、当院は北信越地域(福井、石川、富山、新潟、長野)では唯一の実施可能施設です。
現在TAVIの禁忌はなくなり、あらゆる患者さんがTAVIのメリットを享受できる可能性があります。しかしながら、二尖弁や人工弁機能不全、透析の患者さんに対するTAVIは、人工弁の種類やサイズ、留置位置など技術的に難しいことが多いのも事実です。経験豊富な施設で相談することをお勧めします。
Q:富大病院の「ここがすごい!」を教えてください
A:私たちは2015年5月に北陸で初めてTAVIを開始し、2021年11月までに350例以上の治療を実施しており、これは北陸では最多の治療件数です(2021年11月現在)。また2021年11月現在、北信越地域では唯一の透析患者さんに対するTAVIが可能な施設です。富山県内だけでなく、石川県や新潟県、長野県、岐阜県といった近隣の病院からも患者さんをご紹介いただき治療を行っています。
当院には、SAPIEN3及びEvolutシリーズ両者のプロクター(適応判断や技術指導を行うことができるスペシャリスト)が在籍しており、新規にTAVIを開始する施設を訪問して、指導(プロクタリング)を行っています。また、日本経カテーテル心臓弁治療学会認定の指導医が1名、実施医が3名在籍しており、安定した治療を提供できることも強みと考えています。
一言メモ
- この治療は第二内科(循環器内科)、第一外科(心臓血管外科)、麻酔科および臨床工学技士・放射線技師・看護師・臨床検査技師・理学療法士によるハートチームを形成し、それぞれの専門分野の知識・技術を持ち寄ることで初めて可能となります。
- 現在のところ、“手術はイヤだ!”との理由でTAVIを受けられる訳ではありません。当院のハートチームで最適な治療法を判断し、ご提案いたします。
0〜9
A〜Z
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- AIDS
- AS
- AYA世代
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- BPA
- BRACAnalysis検査
- Brain Heart team
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- C型肝炎ウイルス
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- ER
- ESD
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- HBOC
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か行
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- 誤嚥防止手術
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- 骨軟骨柱移植
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