ホーム

富山大学附属病院の先端医療

新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の考え方―総合感染症センター

富山大学附属病院の先端医療

感染症科

新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の考え方―総合感染症センター

川筋仁史/特命助教、 山本善裕/教授

新型コロナワクチンについて

日本で接種が行われているファイザーやモデルナ製のワクチンは、ウイルスを構成するスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)の遺伝情報(mRNA:メッセンジャーRNA)を脂質の膜に包んだmRNAワクチンです。このワクチンを接種することで、その遺伝情報をもとに、体内でスパイクタンパク質が産生され、そのスパイクタンパク質に対して、体内でさまざまな抗体が作られます。作られる抗体の中には、特にウイルスの感染性を低下させる効果のあるものがあり、これを中和抗体と呼んでいます。ワクチンにより中和抗体が産生されることなどで免疫を獲得し、COVID-19を予防できると考えられています。

新型コロナワクチン接種6ヶ月後までの抗体推移

新型コロナワクチンは、従来株だけではなく、変異株に対してもCOVID-19の発症を予防する高い効果があり、また、感染や重症化を予防する効果も確認されています。しかしながら時間の経過に伴い、中和抗体が減ってしまうことなどによって、感染予防効果等が徐々に低下していくことが示唆されており、追加(3回目)接種が推奨されています。

そこで当院においても2回接種後の時間経過に伴う抗体推移に関して調査を行い、当院スタッフ約650名を対象に、ファイザー製ワクチン2回接種から2週間後と6ヶ月後に、抗体の「量」と、「質」としての中和活性(中和抗体が感染を阻止する程度)を評価しました。その結果、ワクチン接種から6ヶ月経過すると、抗体の「量」が2週間後に比べ、全体として約3分の1まで低下していることが分かりました(図1)。一部の方は抗体量があまり低下せず、維持されていましたが、抗体の「質」としての中和活性は、全体において、野生株に比べてデルタ株やオミクロン株で顕著に低下していることが確認されました(図2)。

新型コロナワクチンの追加(3回目)接種

そこで、さらに追加(3回目)接種を行った当院スタッフ565名を対象に、3回目接種から2週間後の抗体の「量」と「質」を再評価しました。その結果、低下していた抗体の「量」が、3回目接種により大幅に回復し、2回接種2週間後よりも10.4倍増加していることが明らかとなりました。また、抗体の「質」としても、低下していたデルタ株やオミクロン株への中和活性が回復していることが分かりました。これらの結果から、特に高齢者や基礎疾患をお持ちの方においては、より積極的な追加接種が推奨されると考えております。なお、2回接種後などに強い副反応が出現した方では、3回目接種時が心配だという方もおられるかと思います。今回、3回目接種時の副反応も調査しましたが、発熱やだるさなどの全身症状の出現率は、2回接種後と同程度かやや少ない結果でありました(図3)。

図1:2回接種2週間後、6ヶ月後、3回接種2週間後の抗体「量」

図1:2回接種2週間後、6ヶ月後、3回接種2週間後の抗体「量」

図2:2回接種6ヶ月後と3回接種2週間後の抗体の「質」 野生株・デルタ株・オミクロン株に対する中和活性値の分布

図2:2回接種6ヶ月後と3回接種2週間後の抗体の「質」 野生株・デルタ株・オミクロン株に対する中和活性値の分布

図3:2回接種後と3回接種後の全身症状出現率の比較

図3:2回接種後と3回接種後の全身症状出現率の比較

0〜9

A〜Z

あ行

か行

さ行

た行

な行

は行

ま行

や行

ら行

わ行