富山大学附属病院の先端医療
Q: がんの痛みに対する超音波内視鏡下神経ブロック―がん性疼痛
林伸彦/特命助教
Q: 超音波内視鏡下神経ブロックとは何ですか?
A:大動脈の前面には神経が網の目のように走っており、腹腔神経叢と呼ばれています(図1)。この網の目は腹腔神経節と呼ばれる神経細胞の塊と神経糸から成り、ちょうど鉄道の駅とレールのような構造になっています。上腹部の内臓(胃・肝臓・胆嚢・膵臓など)のがんによる痛み刺激は各臓器の交感神経線維からこの腹腔神経叢を通り、脊髄をのぼって脳に伝えられ、痛みとして感じられます。痛み刺激を伝える中継地点である神経叢に神経破壊作用のあるアルコールを注入して、痛み刺激が伝わらないようにして痛みを和らげる方法を神経ブロックと呼びます。
従来はレントゲン、あるいはCTの画像を見ながら、背中側から針を刺す方法が主流でした。しかし、大動脈や背骨が存在することで技術的に難しく、血管を傷つける危険があることが問題でした。
最近になり、胃カメラの先端に超音波観測装置がついた内視鏡(超音波内視鏡:写真1)を用いて、胃や十二指腸から、大動脈やその周囲や膵臓などの臓器を観察することができるようになりました。この超音波内視鏡を用いて、神経叢あるいは神経節を穿刺(図2)して薬液を注入し、神経を破壊する方法が超音波内視鏡下神経ブロックです。
Q:超音波内視鏡下神経ブロックはどのように行われますか?
A:処置当日は絶食した状態で来院して頂きます。処置は鎮静剤を使って、眠った状態で受けて頂きますので、事前に血管にプラスチックの留置針を入れて点滴を開始します。
処置台の上で鎮静剤を注射して、眠った(あるいは少しボーっとした)状態でカメラを入れ、胃の中から超音波で大動脈の周りの腹腔神経叢がある部位を探して(写真2)、血管や腸を傷つけず安全に穿刺できるかどうかを判断します。
状況に応じて神経叢が存在する付近に注射するか、神経節そのものに注射するか判断します。十分に薬液を行き渡らせるために数回針を刺して薬液注入を行います。処置終了後には、薬液が注入された範囲を確認するため、CTを撮影します。その後病室に戻り、2時間程度安静にして頂きます。処置にかかる時間は30分程度です。
この処置は終了後の経過観察が必要なため入院して頂いて処置を行います。問題がなければ翌朝には食事を摂り、退院して頂くことができます。
Q:どのような病気・状態が対象ですか?
A:痛みの刺激が腹腔神経叢を通る臓器は、お腹の上部、具体的な臓器としては肝臓・胆道・膵臓・脾臓・胃・症状・上行結腸から横行結腸です。これらの臓器の痛み(特にがんによる痛み)が、超音波内視鏡下神経ブロックの対象となります。しかし、お腹に大量の水が貯まった状態(腹水)や、がんが腹膜に転移した状態(腹膜播種)、腹膜炎など炎症による痛みは、別の伝達経路で伝わっているため、神経ブロックは効きません。
この治療に適した患者さんの状態には以下の2通りがあります。1つ目は、がんの診断後、痛みが出始めた早い段階の患者さんです。早期に神経ブロックを行うことで、その後の痛みのコントロールが良好であったというデータがあります。2つ目は、痛みに対して麻薬性鎮痛薬を使ったものの効果が十分でない場合、あるいは、痛みが十分取り除けていないにもかかわらず、眠気や吐き気などの副作用が強くて麻薬性鎮痛薬の量を増やすことが難しい状態の患者さんです。
がんの痛みを十分にコントロールすることは、がんそのものに対する治療を十分に行い、よりよい生活を受けるためにも非常に重要です。
一言メモ
- 痛みを我慢する必要はありません。
- がん性疼痛に対する有効な治療法の1つです。
- 薬剤による痛みのコントロールが難しい症例に対して有効なことがあります。
0〜9
A〜Z
- ABO血液型不適合腎移植
- AIDS
- AS
- AYA世代
- BIA-ALCL
- BPA
- BRACAnalysis検査
- Brain Heart team
- B型肝炎ウイルス
- CGM
- CIDP
- CT
- CTEPH
- C型肝炎ウイルス
- DBS
- Dual-energy(デュアルエナジー)CT
- ER
- ESD
- FFR CT検査
- HbA1c
- HBOC
- HIV
- HPV
- IMRT
- LCIG
- LGBTQ+
- LVA
- MS
- Multiple LVA
- NICU
- NIPT
- NMOSD
- OncotypeDX検査
- PCA
- PCI
- PCR法
- PEA
- QOL
- Qスイッチアレックスレーザー
- Qスイッチルビーレーザー
- R-CHOP療法
- RRM
- rt-PA療法
- SARS-CoV-2
- ST
- Stanford B型急性大動脈解離
- TAVI
- TIA
- WATCHMAN
- X-Map
あ行
か行
- ガイドシース併用超音波気管支内視鏡
- 潰瘍性大腸炎
- 化学放射線療法
- 化学療法(抗がん剤治療)
- 下肢静脈瘤
- 仮想画像(バーチャル)気管支内視鏡
- 画像診断
- 仮想非造影(単純)CT
- 活動
- カテーテル
- カテーテルアブレーション
- カテーテル治療
- カテーテル閉鎖術
- 下鼻甲介切除術
- 硝子体
- 川崎病
- 眼圧
- がん遺伝子パネル検査
- 寛解導入療法
- 間欠跛行
- がんゲノム医療
- 肝硬変
- 肝細胞がん
- がんサバイバー
- 患者管理鎮痛法
- 眼振
- がん性疼痛
- 関節鏡
- 肝切除術
- 関節リウマチ
- 乾癬
- 肝臓がん
- 冠動脈造影CT検査
- 漢方薬
- 肝予備能
- 冠攣縮性狭心症
- 奇異性塞栓
- 気管支内視鏡
- 機能温存
- 帰脾湯
- 救急医療
- 救急外来
- 救急科専門医
- 急性期脳梗塞
- 急性の痛み
- 急速経口免疫療法
- 胸腔鏡
- 胸腔鏡下食道切除術
- 鏡視下手術
- 狭心症
- 強度変調放射線治療
- くも膜下出血
- クライオバルーンアブレーション
- クローバー頭蓋
- クローン病
- 経カテーテル大動脈弁留置術
- 経口胆道鏡
- 経静脈的血栓溶解療法
- 頚髄症
- 頚椎症性脊髄症
- 経皮感作
- 経皮的冠動脈形成術
- 経皮的左心耳閉鎖術
- 血管合併切除
- 血管内レーザー治療
- 血行再建術
- 血栓回収術
- 血糖コントロール
- 血糖変動
- 減圧症
- 献腎移植
- 原発性肺高血圧
- 構音障害
- 口蓋裂
- 高気圧酸素治療
- 高気圧酸素治療装置
- 抗凝固療法
- 口腔がん
- 口腔機能障害
- 抗血栓薬
- 膠原病
- 高脂血症
- 光視症
- 甲状腺がん
- 口唇・口腔がん
- 抗精神病薬
- 抗生物質
- 抗体
- 後天性免疫不全症候群
- 喉頭がん
- 喉頭中央部分切除術
- 高度肥満症治療外来
- 紅斑
- 広汎子宮全摘術
- 硬膜外神経ブロック
- 抗リウマチ薬
- 誤嚥
- 誤嚥防止手術
- 呼吸器外科手術
- 極低出生体重児
- こころのリスク状態
- 骨粗しょう症
- 骨軟骨柱移植
- 骨盤臓器脱
- 固定術
- コンデンスリッチ脂肪注入
さ行
- 再生医療
- サイトカイン
- サルコペニア
- 三角頭蓋
- 自家培養軟骨移植
- 自家末梢血幹細胞移植
- 色素レーザー
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮形態異常
- 子宮体がん
- 子宮膣部円錐切除術
- 子宮内炎症
- 子宮内病原微生物
- 視神経脊髄炎
- 持続血糖測定
- 脂肪注入
- 視野狭窄
- 斜視
- 斜頭蓋
- シャント手術
- 縦隔腫瘍
- 集学的治療
- 周産母子センター
- 重症化予防指導
- 修正型電気けいれん療法
- 手術支援ロボット
- 手術支援ロボット(ダビンチ)
- 手術療法
- 術後の痛み
- 出生前診断
- 腫瘍熱
- 純脂肪注入
- 除圧術
- 障害
- 消化管再建
- 消化器がん
- 小児がん
- 小児脳腫瘍
- 将来の瘤化を予防
- 食道がん
- 食物アレルギー
- 食物経口負荷試験
- 腎移植
- 腎盂尿管移行部狭窄
- 新型コロナウイルス感染症
- 新型コロナワクチン
- 心筋・心膜疾患
- 心筋梗塞
- 神経細胞
- 神経ブロック
- 心血管合併症・脂質管理外来
- 人工関節
- 人工肛門
- 人工膝関節置換術
- 腎臓移植
- 心臓カテーテル検査
- 腎臓病
- 腎代替療法
- 靱帯損傷
- 心不全
- 腎部分切除術
- 心房細動
- 心房中隔欠損症
- 膵がん
- 膵腫瘍
- 水頭症
- 頭蓋骨縫合早期癒合症
- ステント
- ステントグラフト治療
- ストーマ
- スポーツ障害
- スリーブ状胃切除術
- 生活の質
- 生活療養指導
- 生体腎移植
- 性別適合手術
- 精密血糖評価介入外来
- 脊髄
- 脊髄髄膜瘤
- 脊柱管
- 脊柱管狭窄症
- 舌小帯縮小症
- 摂食・嚥下機能
- 摂食・嚥下障害
- 切迫早産
- 潜在性二分脊椎
- 前十字靱帯損傷
- 染色体異常
- 先進1型糖尿病外来
- 先天性心疾患
- 前立腺がん
- 前立腺全摘出術
- 双極性障害
- 僧帽弁閉鎖不全症
- 続発性不育症
- 咀嚼・嚥下障害
- 咀嚼機能
た行
- ダ・ヴィンチ
- 胎児染色体異常
- 大腿神経ブロック
- 大腸がん
- 大腸ポリープ
- 大動脈弁狭窄症
- ダウン症候群
- 唾液腺がん
- 多発性硬化症
- 多発性骨髄腫
- 胆管結石
- 単孔式手術
- 炭酸ガスレーザー
- 単純性血管腫
- 胆石
- 短頭蓋
- 胆道がん
- 胆のう結石
- チーム医療
- 遅発性太田母斑
- 茶アザ
- 中隔子宮
- 中耳加圧治療
- 超音波ガイド下経気管支針生検
- 超音波内視鏡下神経ブロック
- 超音波内視鏡検査
- 超音波骨メス
- 長期フォローアップ
- 調節性内斜視
- 釣藤散
- 直腸がん
- 治療抵抗性統合失調症治療薬
- チロシンキナーゼ阻害剤
- 沈黙の臓器
- 追加(3回目)接種
- 椎間板
- 椎体
- 低位放射線治療
- 低出生体重児
- 低侵襲
- 適応障害
- 手外科
- 手の病気
- デュピイトレン拘縮
- てんかん
- 電気水圧衝撃波
- 頭頚部
- 頭頚部がん
- 統合失調症
- 動注化学療法
- 糖尿病
- 動脈管開存
- 動脈硬化
- 特異性IgE抗体
- 特発性肺動脈性肺高血圧
- トモシンセシス
- とやまパラドックス
- トランスジェンダー女性
- トランスジェンダー男性
- トリアージ
な行
は行
- パーキンソン病
- ハートチーム
- 肺がん
- 肺区域切除術
- 肺血管内膜摘除術
- 肺高血圧症
- 肺塞栓症
- バイパス手術
- 培養脂肪幹細胞
- 肺葉切除術
- 発熱
- 鼻・副鼻腔がん
- ハビリテーション
- バリウム
- バルーン内視鏡
- バルーン肺動脈形成術
- 半月板損傷
- ヒアルロン酸
- 非確定的検査
- 光干渉断層計
- 光凝固
- 膝関節
- 非ステロイド性抗炎症薬
- 鼻中隔外鼻形成術
- 鼻中隔彎曲症
- ヒトパピローマウイルス
- ヒト免疫不全ウイルス
- 皮膚プリックテスト
- 皮膚レーザー
- 飛蚊症
- 鼻閉
- 皮弁法
- 飛沫予防策
- 肥満
- 鼻涙管閉塞症
- 不育症
- フェンタニル
- 腹横筋膜面ブロック
- 腹腔鏡下肝切除
- 腹腔鏡手術
- 腹腔神経節
- 複合的理学療法
- 複視
- 不整脈
- 舟状頭蓋
- 不明熱
- プリズム眼鏡
- プレコンセプション
- プレコンセプション(妊娠前)ケア外来
- プロテアソーム阻害剤
- 分子標的治療薬
- 平衡機能検査
- 閉塞性動脈硬化症
- ベストウエイト外来
- 変異株
- 変形性膝関節症
- 変視症
- 弁潜血検査
- 扁平上皮がん
- 扁平母斑
- 包括的脳卒中センター
- 膀胱全摘除術
- 放射線療法
- 補助人工心臓
- 母体血胎児染色体検査
- ボツリヌス毒素
- 哺乳障害