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富山大学附属病院の先端医療

Q:Stanford B型急性大動脈解離に対するステントグラフト治療―(Stanford B型)大動脈解離

富山大学附属病院の先端医療

第一外科

Q:Stanford B型急性大動脈解離に対するステントグラフト治療―(Stanford B型)大動脈解離

長尾兼嗣/特命助教

Q:Stanford B型大動脈解離とはどのような病気ですか?

A:大動脈解離とは、大動脈の内膜が高血圧や動脈硬化、老化等により弱くなり、体動や血圧負荷などにより大動脈が裂けてしまった状態です。血管はもともと、内膜、中膜、外膜の3層構造となっていますが、このうち内膜に亀裂が入り、中膜が2つに裂けてしまった状態が大動脈解離という状態です(図1)。

大動脈解離には、Stanford A型とB型があり(図2)、B型とは、裂けてしまった範囲が上行大動脈(心臓のすぐ近く)まで及んでいない状態です。発生頻度は、10万人あたり3〜6人と、頻度の高い疾患です。大動脈からは、多くの枝が分岐しており、解離により分枝が閉塞してしまうと、腸や腎臓、足といった重要な臓器に血液を送る枝の血流が阻害され、還流障害(malperfusion)の状態となります。

また、解離により形成された偽腔は、血管の膜が薄くなってしまうため脆弱で、時間がたつにつれて瘤化してしまう可能性があります。

Q:Stanford B型大動脈解離の治療はどのようなものですか?

A:Stanford B型大動脈解離の治療は、malperfusionの有無で大きく異なります。

malperfusionがある場合は、血流改善のために緊急手術となることがあります。

malperfusionのない場合は、安静、鎮痛、降圧により、それ以上の解離の進行を予防することになります。治療には、おおよそ1か月程度の入院が必要となります。

退院後も大動脈の解離した状態は変わらないので、慢性期の瘤化(解離した部分が徐々に拡張して動脈瘤となること)を予防するために、血圧の管理と定期的な通院が必要になります。

慢性期に瘤化してきた場合には、破裂を予防するために手術が必要となります。多くの場合、開胸下での人工血管手術となり、体への侵襲が大きくなります。

Q:ステントグラフト治療とは、どのようなものですか?

A:ステントグラフト治療とは、足の付け根から人工血管の付いた金属製のばね(ステントグラフト)を挿入し、血管の中から動脈瘤を治療する方法です(図3)。もともとは大動脈瘤に対する治療法でしたが、Stanford B型大動脈解離に対しても有用性が示され、徐々に一般化してきています。

大動脈解離に対しては、血管の裂け目を塞ぐことで偽腔への血流を制限し、将来的な瘤化を予防することが目的です。

Q:ステント治療には、どのようなメリットがありますか?

A:Stanford B型解離に対するステントグラフト治療のメリットは、将来の瘤化を予防することで、開胸による大きな手術を避けることができることです。ステントグラフト治療は、カテーテル治療なので、足の付け根から行うことができます。うまく偽腔への血流を制御できれば、偽腔の縮小も期待できます(図4)。低侵襲のカテーテル治療で、将来の開胸手術を避けることができるのが最大のメリットです。

ステントグラフト治療の適応には、いくつかの条件があり、治療のタイミングも発症から3か月後以降〜1年以内が最適と言われています。

当科では、ステントグラフト治療の資格を持った医師が多く在籍しており、専門的な治療を提供しております。

一言メモ

  1. Stanford B型大動脈解離は、慢性期に瘤化して開胸手術を要する可能性がある。
  2. ステントグラフト治療により、慢性期の瘤化を予防することができる可能性がある。
  3. ステントグラフト治療は、足から行うカテーテル治療であり、侵襲が小さい。
  4. ステントグラフト治療を行うタイミングは、発症から3か月目から1年以内が推奨されている。
図1:大動脈解離の模式図

図1:大動脈解離の模式図

図2:大動脈解離Stanford分類

図2:大動脈解離Stanford分類

図3:ステントグラフト

図3:ステントグラフト

図4:ステントグラフト治療による偽腔の消退

図4:ステントグラフト治療による偽腔の消退

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