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富山大学附属病院の先端医療

手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を用いた体にやさしい手術―泌尿器科、消化器外科

富山大学附属病院の先端医療

泌尿器科、消化器外科

手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を用いた体にやさしい手術―泌尿器科、消化器外科

北村寛/教授

手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」とは?

内視鏡下手術支援ロボットda Vinci(ダ・ヴィンチ)を用いた手術は、低侵襲性と精密性を両立した画期的な手術です。医師の目となる内視鏡や、ロボットアームの先端に取り付けた指先同様の動きをする鉗子が、トロカー(内視鏡用ポート)を通じて患者さんの体内に入り、医師は画面に映し出される3D画像を見ながら、鉗子を自分の手のように動かして手術を行います。患部の様子は立体的に捉えられ、先端の動きは大変緻密で、人間の関節に近い、細かい動きを行うことができます。手術に合わせた専用の器具を自在に動かせるため、細い血管や神経などの縫合も容易に行えます。つまり従来の内視鏡手術では難しかった手術も可能となります。

どんな治療に使われていますか?

前立腺がんに対する前立腺全摘除術と、腎臓がんに対する腎部分切除術が最も多く、これらの手術で全体の8割以上を占めています。2018年からは膀胱がんに対する膀胱全摘除術にも保険診療が適用となり、当科ではこれらの病気に対する標準治療として、ダ・ヴィンチ手術を提供しています。

例えば前立腺がんの手術だと、開腹手術と比べて出血量が10分の1で済みます。また手術後は尿失禁が起こるのですが、ダ・ヴィンチで手術をすると失禁が軽度で回復が早いという特長があります。腎臓がんの手術では、従来の手術と比較して腎臓の機能を低下させにくい長所があります。膀胱がんの手術では、術後合併症の減少と食事開始までの期間短縮が認められています。

いずれの手術も、がんをしっかり切除する点において、従来の手術と同等かそれ以上の効果があることが知られています。2020年からは、骨盤臓器脱や腎盂尿管移行部狭窄といった良性疾患にも、保険診療としてこの手術を実施することが可能となりました。

当院での実績

当院では2016年よりダ・ヴィンチ手術を開始し、年々手術件数が増加しています。前立腺がん、腎がん、膀胱がんの手術は北陸屈指の手術件数を誇り、特に腎がんの手術では、全国で15番目に多い件数(週刊ダイヤモンド 2018/3/17号)となっています。最近の治療成績は、86%の患者さんで「切除断端陰性+腎機能保持+合併症なし」の3目標を達成し、現在まで全例、腎臓の温存が可能となっています。2020年8月からは、ダ・ヴィンチ専用手術室が増設され、さらに多くの患者さんにこの手術を受けていただける体制になり、また手術までの待機期間が短くなっています。

患者さんのQOL向上のために

ダ・ヴィンチ手術は手術の傷を大きくしないため、痛みが軽い、手術後の回復が早い、体に大きな傷あとが残らない、などのメリットがあります。体にやさしく、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の向上に貢献することが期待されます。当院では疾患に対する治療効果と患者さんのQOLを両立する手術を心掛けています。

ダ・ヴィンチ手術を安全確実に実施するために

ダ・ヴィンチ手術を予定通りに実施するために、さまざまなスタッフが関わっています。中でもダ・ヴィンチ本体を起動し、確実に作動させ、安全に手術を完遂するために、臨床工学技士の活躍が欠かせません。日頃から機器をしっかりメインテナンスしているため、当院では機械トラブルによる予定手術の中止や作動中の停止は、今までに1件もありません。また看護師はダ・ヴィンチに装着する手術器械の準備だけでなく、患者さんの体位を常時確認し、無理な力がかかっていないかどうかをチェックしています。さらに麻酔科医はダ・ヴィンチ手術中の全身麻酔と呼吸、循環動態を中心とした全身管理を行います。

このように、外科医以外のスタッフの働きがあってこそ、手術を安全確実に行うことができるのです。ダ・ヴィンチ手術にかかわるスタッフのチームワークの良さも当院の強みです。

写真1:ダ・ヴィンチ サージカル システム

写真1:ダ・ヴィンチ サージカル システム

写真2:術者が手術を行っている様子

写真2:術者が手術を行っている様子

写真3:ダ・ヴィンチで折り鶴を作っているところ

写真3:ダ・ヴィンチで折り鶴を作っているところ

写真4:ダ・ヴィンチ手術のセットアップ風景(ロボットをドッキングするところ)

写真4:ダ・ヴィンチ手術のセットアップ風景(ロボットをドッキングするところ)

表:当院における前立腺がん、腎臓がん、膀胱がんダ・ヴィンチ手術の年間件数

表:当院における前立腺がん、腎臓がん、膀胱がんダ・ヴィンチ手術の年間件数

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