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富山大学附属病院の先端医療

Q:手の病気や障害の治療―手外科手術

富山大学附属病院の先端医療

整形外科

Q:手の病気や障害の治療―手外科手術

頭川峰志/助教

Q:手の特異性について

A:手は第2の脳ともいわれます。手には多くの関節、筋肉、腱があって、非常に繊細な動きが可能であり、また、神経が密に分布するきわめて大切な部分です。このため、少しの障害でも日常生活に大きな支障や苦痛が生じます。また、露出部であるため、指が曲がっている、一部がない、傷跡が残っているなどがあると、人の目が気になって精神的な負担につながります。手の診療においては、形(かたち)と機能についての詳細な知識と、繊細な技術が要求されます。特に、手、指の手術では0.5〜2mm前後の血管や神経を扱うため、細かい操作には顕微鏡を使った手術を行うことが多くなります。これらの特殊性から、手外科領域では、整形外科とは別に専門医制度が設けられています。富山県内には現在、5人の手外科専門医がおり、そのうちの1人が当院に常勤して手の診療にあたっています。

痛みや障害に対して、診察や各種画像(X線検査、エコー、CT、MRI)所見、ブロック注射などを組み合わせて、原因検索や病態把握を行います(図)。また、糖尿病、関節リウマチ、ホルモン異常など、全身に現れる異常の部分的な症状が、手に所見として出ている可能性も考えて、手の症状だけにとらわれない診察と治療を行っています。

Q:どのような治療がありますか?

A:原因や程度にもよりますが、まずは飲み薬、注射、リハビリ、装具など、手術をしないで治す方法を選択します(写真1)。

手の手術は、けがの治療、病気に対する治療、けがや病気の後遺症に対する機能再建治療があります。けがの治療では、皮膚の欠損や骨折、神経・血管・腱の断裂に対する修復を行います。切断では、できる限りこれらをすべて修復し、再接着を目指します(写真2)。

ひどいけがの場合は、ほかの部位から手に皮膚や骨、軟骨などを移植する手術を行うこともあります。

病気で多いのは、腱鞘炎、末梢神経圧迫、関節軟骨変性です。腱の通り道が狭くなり、その部分に炎症が起きて、痛みや運動障害を生じた場合や、神経が圧迫されて、しびれや麻痺が生じた場合に、圧迫されている腱や神経を開放します。軟骨が失われることで、関節が障害されている場合には、関節固定あるいは、人工関節手術を行います。機能再建には、変形に対する矯正、神経麻痺に対する腱移行、拘縮により固まってしまった関節に対する授動術などが含まれます(写真3)。当院では、このように高度な専門性のもとに、手の病気や障害の治療を行っています。

Q:手術を受けるのは怖くないですか?

A:各種麻酔により、苦痛が最小限になるよう心がけています。手術の範囲や程度に応じて、全身麻酔、腕だけに麻酔をかける腕神経叢ブロック、動きを保ちながら行う局所麻酔を使い分けています。

特に、局所麻酔の手術では患者さんに指を動かしてもらい、本人にも動きの回復を手術中から実感してもらって、早期のリハビリにつなげています。手外科手術は、日帰り、あるいは1泊入院の手術も多く行っています。

一言メモ

  1. 手には多くの骨、関節、筋肉、腱、神経があり、これらが、けがや病気で障害されると痛みや機能障害が出現します。
  2. 当院では、これらの原因や病態に応じて、高い専門性でけがや病気の治療、および後遺症に対する機能再建を行っています。
図:骨と腱を描出した3次元CT(手、骨、屈筋腱)

図:骨と腱を描出した3次元CT(手、骨、屈筋腱)

写真1:デュピイトレン拘縮(手のひらに索状のしこりができて、指が伸ばせなくなる疾患)。

写真1:デュピイトレン拘縮(手のひらに索状のしこりができて、指が伸ばせなくなる疾患)。

写真2:母指の完全切断、切断指の再接着の手術後。顕微鏡で血管や神経をつなぎます。

写真2:母指の完全切断、切断指の再接着の手術後。顕微鏡で血管や神経をつなぎます。

写真3:指の人工関節置換術(リウマチの尺側偏位、MP人工関節)

写真3:指の人工関節置換術(リウマチの尺側偏位、MP人工関節)

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