富山大学附属病院の先端医療
Q:肺がんに対する内科治療―肺がん
猪又峰彦/診療准教授
Q:チロシンキナーゼ阻害剤とは?
A: 進行肺がんに対しては、薬剤による治療が中心となります。従来は、抗がん剤が進行肺がんに対する唯一の薬剤でしたが、分子標的治療薬が登場したことで、肺がん診療は大きく変わりました。分子標的治療薬の1つであるチロシンキナーゼ阻害剤は、がんの増殖に関わる分子の働きを抑えることで、すぐれた治療効果を発揮します。チロシンキナーゼ阻害剤は、がんの増殖に関わる分子の元となる遺伝子変異が、がん組織から検出された場合に使うことができます。
2002年には1種類(EGFRチロシンキナーゼ阻害剤)だったチロシンキナーゼ阻害剤は、2021年現在は5種類(EGFR・ALK・ROS-1・BRAF・METチロシンキナーゼ阻害剤)に増えました。
遺伝子変異の検査方法にも発展が見られ、かつては各遺伝子を1つずつ評価する検査方法(PCRやたんぱく質を検出する免疫染色)が主体でしたが、現在は、次世代シークエンサーにより、より多くの遺伝子変異を同時に評価することが可能となりました。私たちは、患者さん一人ひとりに対して、最適と考えられる検査方法を選択し、得られた遺伝子変異の検査結果から、最善の治療方針を提示いたします。
図1に、2016年〜2020年にかけて遺伝子変異検査を行った177例の検査結果を示します。遺伝子変異が陽性となった場合には、チロシンキナーゼ阻害剤によって治療を開始しており、長期間にわたって安定した病状でお過ごし頂いている患者さんが多くいらっしゃいます。
Q:免疫チェックポイント阻害剤とは?
A: 治療可能な遺伝子変異が検出されなかった場合は、チロシンキナーゼ阻害剤を使用することができません。しかし、このような肺がんにおいても2015年12月に、免疫チェックポイント阻害剤が肺がんに対して使用可能となったことで、状況が変わりました。免疫チェックポイント阻害剤は、リンパ球を活性化することで、がんに対する治療効果を発揮します(図2)。2021年現在では、免疫チェックポイント阻害剤の単独投与に加えて、抗がん剤との併用療法や、免疫チェックポイント阻害剤の複数併用療法が開発され、それぞれ、従来の抗がん剤による治療と比較して、治療効果が優れていることが実証されています。
図3と図4に当科における免疫チェックポイント阻害剤による初回治療の現状を示します。かつて遺伝子変異が陰性である場合は、抗がん剤治療が主体でしたが、次第に免疫チェックポイント阻害剤が、初回の治療に組み込まれる割合が高くなってきました。ただし、免疫チェックポイント阻害剤にも他の薬剤と同様に、副作用リスクがあります。特に、活性化した免疫によっておこる副作用などを免疫関連有害事象と呼びます。このため、免疫チェックポイント阻害剤を用いた診療では、注意深い観察が必要です。また治療開始前には、患者さんの体の状態や過去に診断された病気の経過なども含めて検討を行う必要があり、その結果によっては、免疫チェックポイント阻害剤を使用しない方が良い場合もあります。私たちは、一人ひとりの患者さんに対して、最善の治療選択肢を提示することを目標として治療を行っています。
Q:分子標的治療薬における注意点は?
A: チロシンキナーゼ阻害薬の副作用には、にきびに似た皮疹、肝臓の障害、下痢、肺炎が挙げられます。これらの副作用に対しては、予防処置や薬剤の減量・休薬により対応します。チロシンキナーゼ阻害剤による肺炎の発症時期は、投与開始から数週間以内であることが多く、投与開始直後は、特に注意深く経過の観察を行います。
免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、治療が継続されている限りは注意し続けることが必要です。早期発見のためには、定期的な検査と早期に症状をお伝えただくことが必要です。免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、全身のいずれの箇所でも起こり得るため、症状が軽度である場合、それが薬剤の副作用なのかどうか患者さん自身では判断が難しいかもしれません。何らかの症状が悪化傾向をたどる場合は、早めに受診してください。
一言メモ
- 分子標的治療薬の登場によって、肺がん患者さんの予後は大きく改善されました。
- 遺伝子変異が陽性である場合、チロシンキナーゼ阻害薬を使用することが可能です。
- 免疫チェックポイント阻害薬は、免疫を活性化することで治療効果を発揮します。
0〜9
A〜Z
- ABO血液型不適合腎移植
- AIDS
- AS
- AYA世代
- BIA-ALCL
- BPA
- BRACAnalysis検査
- Brain Heart team
- B型肝炎ウイルス
- CGM
- CIDP
- CT
- CTEPH
- C型肝炎ウイルス
- DBS
- Dual-energy(デュアルエナジー)CT
- ER
- ESD
- FFR CT検査
- HbA1c
- HBOC
- HIV
- HPV
- IMRT
- LCIG
- LGBTQ+
- LVA
- MS
- Multiple LVA
- NICU
- NIPT
- NMOSD
- OncotypeDX検査
- PCA
- PCI
- PCR法
- PEA
- QOL
- Qスイッチアレックスレーザー
- Qスイッチルビーレーザー
- R-CHOP療法
- RRM
- rt-PA療法
- SARS-CoV-2
- ST
- Stanford B型急性大動脈解離
- TAVI
- TIA
- WATCHMAN
- X-Map
あ行
か行
- ガイドシース併用超音波気管支内視鏡
- 潰瘍性大腸炎
- 化学放射線療法
- 化学療法(抗がん剤治療)
- 下肢静脈瘤
- 仮想画像(バーチャル)気管支内視鏡
- 画像診断
- 仮想非造影(単純)CT
- 活動
- カテーテル
- カテーテルアブレーション
- カテーテル治療
- カテーテル閉鎖術
- 下鼻甲介切除術
- 硝子体
- 川崎病
- 眼圧
- がん遺伝子パネル検査
- 寛解導入療法
- 間欠跛行
- がんゲノム医療
- 肝硬変
- 肝細胞がん
- がんサバイバー
- 患者管理鎮痛法
- 眼振
- がん性疼痛
- 関節鏡
- 肝切除術
- 関節リウマチ
- 乾癬
- 肝臓がん
- 冠動脈造影CT検査
- 漢方薬
- 肝予備能
- 冠攣縮性狭心症
- 奇異性塞栓
- 気管支内視鏡
- 機能温存
- 帰脾湯
- 救急医療
- 救急外来
- 救急科専門医
- 急性期脳梗塞
- 急性の痛み
- 急速経口免疫療法
- 胸腔鏡
- 胸腔鏡下食道切除術
- 鏡視下手術
- 狭心症
- 強度変調放射線治療
- くも膜下出血
- クライオバルーンアブレーション
- クローバー頭蓋
- クローン病
- 経カテーテル大動脈弁留置術
- 経口胆道鏡
- 経静脈的血栓溶解療法
- 頚髄症
- 頚椎症性脊髄症
- 経皮感作
- 経皮的冠動脈形成術
- 経皮的左心耳閉鎖術
- 血管合併切除
- 血管内レーザー治療
- 血行再建術
- 血栓回収術
- 血糖コントロール
- 血糖変動
- 減圧症
- 献腎移植
- 原発性肺高血圧
- 構音障害
- 口蓋裂
- 高気圧酸素治療
- 高気圧酸素治療装置
- 抗凝固療法
- 口腔がん
- 口腔機能障害
- 抗血栓薬
- 膠原病
- 高脂血症
- 光視症
- 甲状腺がん
- 口唇・口腔がん
- 抗精神病薬
- 抗生物質
- 抗体
- 後天性免疫不全症候群
- 喉頭がん
- 喉頭中央部分切除術
- 高度肥満症治療外来
- 紅斑
- 広汎子宮全摘術
- 硬膜外神経ブロック
- 抗リウマチ薬
- 誤嚥
- 誤嚥防止手術
- 呼吸器外科手術
- 極低出生体重児
- こころのリスク状態
- 骨粗しょう症
- 骨軟骨柱移植
- 骨盤臓器脱
- 固定術
- コンデンスリッチ脂肪注入
さ行
- 再生医療
- サイトカイン
- サルコペニア
- 三角頭蓋
- 自家培養軟骨移植
- 自家末梢血幹細胞移植
- 色素レーザー
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮形態異常
- 子宮体がん
- 子宮膣部円錐切除術
- 子宮内炎症
- 子宮内病原微生物
- 視神経脊髄炎
- 持続血糖測定
- 脂肪注入
- 視野狭窄
- 斜視
- 斜頭蓋
- シャント手術
- 縦隔腫瘍
- 集学的治療
- 周産母子センター
- 重症化予防指導
- 修正型電気けいれん療法
- 手術支援ロボット
- 手術支援ロボット(ダビンチ)
- 手術療法
- 術後の痛み
- 出生前診断
- 腫瘍熱
- 純脂肪注入
- 除圧術
- 障害
- 消化管再建
- 消化器がん
- 小児がん
- 小児脳腫瘍
- 将来の瘤化を予防
- 食道がん
- 食物アレルギー
- 食物経口負荷試験
- 腎移植
- 腎盂尿管移行部狭窄
- 新型コロナウイルス感染症
- 新型コロナワクチン
- 心筋・心膜疾患
- 心筋梗塞
- 神経細胞
- 神経ブロック
- 心血管合併症・脂質管理外来
- 人工関節
- 人工肛門
- 人工膝関節置換術
- 腎臓移植
- 心臓カテーテル検査
- 腎臓病
- 腎代替療法
- 靱帯損傷
- 心不全
- 腎部分切除術
- 心房細動
- 心房中隔欠損症
- 膵がん
- 膵腫瘍
- 水頭症
- 頭蓋骨縫合早期癒合症
- ステント
- ステントグラフト治療
- ストーマ
- スポーツ障害
- スリーブ状胃切除術
- 生活の質
- 生活療養指導
- 生体腎移植
- 性別適合手術
- 精密血糖評価介入外来
- 脊髄
- 脊髄髄膜瘤
- 脊柱管
- 脊柱管狭窄症
- 舌小帯縮小症
- 摂食・嚥下機能
- 摂食・嚥下障害
- 切迫早産
- 潜在性二分脊椎
- 前十字靱帯損傷
- 染色体異常
- 先進1型糖尿病外来
- 先天性心疾患
- 前立腺がん
- 前立腺全摘出術
- 双極性障害
- 僧帽弁閉鎖不全症
- 続発性不育症
- 咀嚼・嚥下障害
- 咀嚼機能
た行
- ダ・ヴィンチ
- 胎児染色体異常
- 大腿神経ブロック
- 大腸がん
- 大腸ポリープ
- 大動脈弁狭窄症
- ダウン症候群
- 唾液腺がん
- 多発性硬化症
- 多発性骨髄腫
- 胆管結石
- 単孔式手術
- 炭酸ガスレーザー
- 単純性血管腫
- 胆石
- 短頭蓋
- 胆道がん
- 胆のう結石
- チーム医療
- 遅発性太田母斑
- 茶アザ
- 中隔子宮
- 中耳加圧治療
- 超音波ガイド下経気管支針生検
- 超音波内視鏡下神経ブロック
- 超音波内視鏡検査
- 超音波骨メス
- 長期フォローアップ
- 調節性内斜視
- 釣藤散
- 直腸がん
- 治療抵抗性統合失調症治療薬
- チロシンキナーゼ阻害剤
- 沈黙の臓器
- 追加(3回目)接種
- 椎間板
- 椎体
- 低位放射線治療
- 低出生体重児
- 低侵襲
- 適応障害
- 手外科
- 手の病気
- デュピイトレン拘縮
- てんかん
- 電気水圧衝撃波
- 頭頚部
- 頭頚部がん
- 統合失調症
- 動注化学療法
- 糖尿病
- 動脈管開存
- 動脈硬化
- 特異性IgE抗体
- 特発性肺動脈性肺高血圧
- トモシンセシス
- とやまパラドックス
- トランスジェンダー女性
- トランスジェンダー男性
- トリアージ
な行
は行
- パーキンソン病
- ハートチーム
- 肺がん
- 肺区域切除術
- 肺血管内膜摘除術
- 肺高血圧症
- 肺塞栓症
- バイパス手術
- 培養脂肪幹細胞
- 肺葉切除術
- 発熱
- 鼻・副鼻腔がん
- ハビリテーション
- バリウム
- バルーン内視鏡
- バルーン肺動脈形成術
- 半月板損傷
- ヒアルロン酸
- 非確定的検査
- 光干渉断層計
- 光凝固
- 膝関節
- 非ステロイド性抗炎症薬
- 鼻中隔外鼻形成術
- 鼻中隔彎曲症
- ヒトパピローマウイルス
- ヒト免疫不全ウイルス
- 皮膚プリックテスト
- 皮膚レーザー
- 飛蚊症
- 鼻閉
- 皮弁法
- 飛沫予防策
- 肥満
- 鼻涙管閉塞症
- 不育症
- フェンタニル
- 腹横筋膜面ブロック
- 腹腔鏡下肝切除
- 腹腔鏡手術
- 腹腔神経節
- 複合的理学療法
- 複視
- 不整脈
- 舟状頭蓋
- 不明熱
- プリズム眼鏡
- プレコンセプション
- プレコンセプション(妊娠前)ケア外来
- プロテアソーム阻害剤
- 分子標的治療薬
- 平衡機能検査
- 閉塞性動脈硬化症
- ベストウエイト外来
- 変異株
- 変形性膝関節症
- 変視症
- 弁潜血検査
- 扁平上皮がん
- 扁平母斑
- 包括的脳卒中センター
- 膀胱全摘除術
- 放射線療法
- 補助人工心臓
- 母体血胎児染色体検査
- ボツリヌス毒素
- 哺乳障害