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富山大学附属病院の先端医療

Q: 炎症性腸疾患の治療-潰瘍性大腸炎、クローン病

富山大学附属病院の先端医療

第三内科(消化器内科)

Q: 炎症性腸疾患の治療-潰瘍性大腸炎、クローン病

南條宗八/診療講師

Q: 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)はどんな病気?

A:潰瘍性大腸炎は大腸に、クローン病は口から肛門までの消化器官全体に炎症が生じる病気です。免疫異常の遺伝子的素因、食事や喫煙などの環境因子、腸内細菌などが関連し消化管の慢性炎症を引き起こすと考えられています。環境因子には、食事や喫煙のほか、睡眠、薬剤、精神的ストレス、ビタミンD、衛生環境などが含まれます。

しかし、原因は十分に解明されておらず、難病に指定されています。患者数は毎年増加しており、2017年報告の全国疫学調査(難病性疾患克服研究事業)によると、潰瘍性大腸炎が約22万人、クローン病が約7万人と推定されています。当院では約130人の潰瘍性大腸炎患者さん、約100人のクローン病患者さんが定期通院しており、その多くを富山県内および近隣医療圏の診療所や総合病院から紹介いただいています。

炎症性腸疾患の検査とは?

A:潰瘍性大腸炎の病勢評価には大腸内視鏡検査が重要ですが、患者さんの負担を伴います。そのため、症状が強い状態での内視鏡検査では鎮痛剤や鎮静剤を適切に使用し患者さんの苦痛軽減に努めています。また、症状のない状態(寛解)での病勢評価には便検査(便中カルプロテクチン検査)を積極的に利用し負担軽減に取り組んでいます。便中カルプロテクチンは大腸の炎症の程度とよく相関することが分かっています。

クローン病では、活動性の小腸病変があっても血液検査(CRP値など)が正常の患者さんがいます。活動性病変を放っておくと腸が狭くなる(狭窄)などの合併症を生じることがあり、小腸内視鏡検査による小腸病変の評価が重要です。

当科ではバルーン内視鏡検査、カプセル内視鏡検査ともにそれぞれ毎年約100件の診療実績があります。カプセル内視鏡検査は長径26.2mmのカプセル型内視鏡を飲み込んで小腸内の写真を撮る検査で、患者さんへの負担が少ないです。小腸が狭くなっていない(狭窄病変のない)クローン病患者さんが対象になります。

Q: 炎症性腸疾患の治療とは?

A: 炎症性腸疾患の治療は2000年以降、急激に進歩しました。メサラジン製剤、ステロイドの他、免疫調節薬、免疫抑制薬、抗TNF-α抗体製剤、抗IL-12/23 p40抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体製剤、JAK阻害剤、血球成分除去療法とさまざまな治療法が選択可能となっており、今後も新たな作用メカニズムの薬剤の開発・発売が期待されています。

一方で、病気の勢いが非常に強い場合や内科的治療が十分に効かない場合には、外科手術が必要です。適切な外科手術のタイミングを逃せば生命に危険が及ぶため、その判断が重要です。特に高齢者では内科的治療にこだわり過ぎず、早めに外科治療を選択することが勧められています。治療には多くの選択肢がありますが、どの治療もメリットとともにデメリットやリスクを伴うため、個別の患者さんに合った適切な治療法を選ぶことが重要です。

Q: 炎症性腸疾患は完治しますか?

A:現在の医療では炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)を完治させることはできず、症状のない状態(寛解)を達成し、維持することが治療の目標です。寛解となった後も適切な治療を継続することで、寛解を維持することができます。

一生の間、付き合っていかなければならない病気ですので、患者さん自身が病気をよく理解し、治療に臨んでいただくことが重要です。当科では個別の患者さんの病状や全身状態に合った適切な治療法を選択し、患者さんの生活の質(QOL)が維持・向上するよう努めています。

図:炎症性腸疾患診療イメージ

図:炎症性腸疾患診療イメージ

写真1:潰瘍性大腸炎

写真1:潰瘍性大腸炎

写真2:クローン病(回腸)

写真2:クローン病(回腸)

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