ホーム

富山大学附属病院の先端医療

皆さんを脳卒中から守る!―包括的脳卒中センター

富山大学附属病院の先端医療

脳神経外科

皆さんを脳卒中から守る!―包括的脳卒中センター

秋岡直樹/診療准教授

脳卒中医療の向上に脳卒中センターを開設

「脳卒中」と呼ばれる病気には、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れて出血する脳出血やくも膜下出血があり、直前まで元気にしていた人が突然倒れてしまう恐ろしい病気です。脳卒中は、がん、心疾患、肺炎とともに日本人の主要な死因の1つであり、寝たきりになる原因の3割が脳血管疾患です。全国的に高齢化が進んでいる中、脳卒中の予防や診療体制の整備には、これまで以上に注力すべき時代を迎えています。このような状況を背景に、富山県における脳卒中医療をさらに向上させるため、富山大学附属病院では2018年4月に「包括的脳卒中センター」を開設しました。

脳卒中治療には、薬物による内科的治療、開頭手術などの直接外科治療、カテーテルを用いた脳血管内治療があります。「包括的」とは、そのすべてを高いレベルで行うという意味を含んでおり、当センターは十分にその役割を果たす医療スタッフ、設備を整えています。

具体的には、急性期脳梗塞に対する脳血栓回収療法、くも膜下出血の急性期治療や難易度の高い脳動脈バイパス併用手術、動静脈奇形塞栓術・摘出術、神経内視鏡を用いた血腫除去手術など、治療方法は多岐にわたります。緊急性の高い脳卒中治療においては、迅速な対応の有無が患者さんの予後を左右しますが、当センターは開設以来、24時間365日即応できる体制を維持しています。当院は高速道路のICも近く、ヘリポートも備えているため、県内全域をカバーしており、さらに岐阜県飛騨地区、新潟県糸魚川地区からの救急も受け入れています。

1.急性期脳梗塞に対する脳血栓回収療法

脳梗塞は脳の動脈が詰まり、血流が途絶えることによって脳細胞が障害を受ける病気です。突然、片側の手足が動かない、言葉がしゃべれない・理解できないといった症状が出現します。そのまま数時間放置すると、完全な脳梗塞となり、後遺症を残すことになります。

したがって、症状に気づいたらすぐに救急車を呼び、病院を受診することが肝要です。来院後は即時にCTやMRIを実施して、適応があれば、緊急で脳血栓回収療法を行います(図1)。足の付け根の血管から頚動脈までカテーテルを入れ、そこから血栓を取り込むステント(柔らかい網状の筒)を脳の血管に送り込み、ステントで血栓を捕まえて回収します。患者さんの状況により、発症から16時間以内であれば、脳血栓回収療法が有効であるとされています。

2018年度の当センターの実績では、来院から脳血管を再開通させるまでに要した時間は、平均97分であり、全国平均と比べて短時間での対応を行うことができました。いずれも重症の脳梗塞であったにもかかわらず、約6割の方が1か月後には歩行可能となるまでに回復しました。

2.くも膜下出血の急性期治療

くも膜下出血の原因の大部分は、脳動脈瘤の破裂です。出血は脳の表面を急激に広がり、脳全体に強いダメージを与えます。脳動脈瘤が再び破れると、さらに状態が悪化し、生命にかかわるため、再出血の予防がきわめて重要となります。できるだけ速やかに開頭による脳動脈瘤頚部クリッピング術(図2- A、B)、あるいは、カテーテルによる脳動脈瘤コイル塞栓術(図2- C、D)を行います。どちらがより有効であるかをチームで十分に検討し、治療を行います。

当センターでは、開頭手術・カテーテル治療、それぞれのスペシャリストが在籍しており、ともに高度な医療を提供することが可能です。

3.脳出血の急性期治療

脳の中に出血が生じ、手足の麻痺や言語障害、意識障害などの症状が出現します。最大の原因は高血圧であり、動脈硬化によって変性した脳動脈の破綻が引き金となります。出血が増大するにつれて症状が重くなり、生命に関わることもあるので、症状が出現したらすぐに救急車を呼ぶことが重要です。血腫が大きく症状が重い場合は、緊急で開頭あるいは神経内視鏡による血腫除去手術を実施します(図3)。

図1:脳血栓回収療法
A)この方は突然の右完全片麻痺、全失語症、意識障害で発症しました。脳血管撮影では右中大脳動脈(矢印)が閉塞しています。
B)無事に血栓が回収でき、脳血管の血流が再開しています。治療直後から患者さんの意識障害と右片麻痺は改善しました。
C)ステントによって回収された血栓

図1:脳血栓回収療法
A)この方は突然の右完全片麻痺、全失語症、意識障害で発症しました。脳血管撮影では右中大脳動脈(矢印)が閉塞しています。
B)無事に血栓が回収でき、脳血管の血流が再開しています。治療直後から患者さんの意識障害と右片麻痺は改善しました。
C)ステントによって回収された血栓

図2:くも膜下出血の脳動脈治療
A)顕微鏡で見た脳動脈瘤
B)脳動脈瘤にクリップをかけた後
C)血管撮影所見(矢印:脳動脈瘤)
D)脳動脈瘤コイル塞栓術を行った後

図2:くも膜下出血の脳動脈治療
A)顕微鏡で見た脳動脈瘤
B)脳動脈瘤にクリップをかけた後
C)血管撮影所見(矢印:脳動脈瘤)
D)脳動脈瘤コイル塞栓術を行った後

図3:A)脳出血の頭部CT
B)開頭血腫除去術を行った後

図3:A)脳出血の頭部CT
B)開頭血腫除去術を行った後

写真:顕微鏡手術(左)とカテーテル治療(右)の様子

写真:顕微鏡手術(左)とカテーテル治療(右)の様子

0〜9

A〜Z

あ行

か行

さ行

た行

な行

は行

ま行

や行

ら行

わ行