富山大学附属病院の先端医療
Q:漢方薬による認知症治療―認知症
渡り英俊/診療講師、 貝沼茂三郎/特命教授
Q:認知症に漢方薬は有効ですか?
A:超高齢社会に入った日本では、認知症が大きな問題となっています。認知症の原因には、アルツマイマー病、血管性認知症、レビー小体病などがあります。症状には、認知機能障害である中核症状と、それに伴ってみられる行動・心理症状(BPSD)があります(図1)。
BPSDは周辺症状ともいわれ、陽性症状と陰性症状に分けることがあります。陽性症状は、幻覚、妄想、せん妄、徘徊、興奮、暴力、暴言などの興奮性の症状です。陰性症状は、抑うつ、無気力、意欲低下、無関心、無言などの抑制性の症状です。症状が進むと患者さんばかりでなく、家族や周囲の人も介護の負担が増え、生活に支障をきたすことになります。
医学が進歩した現代でも、根本的な治療があるわけではありませんが、有効な薬がいくつか使えるようになってきました。漢方薬もBPSDに有用とされ、診療に取り入れられています。
Q:認知症にはどんな漢方薬が使われますか?
A:一般的に認知症の治療で漢方薬は、BPSDをやわらげる目的で使用されます。抑肝散(よくかんさん)が代表的な漢方薬で、その有効性を裏づける臨床試験結果がいくつか報告されています。日本老年医学会のガイドラインでも、認知症に伴うBPSDのうち、易怒(ささいなことで怒りやすくなること)、幻覚、妄想、昼夜逆転、興奮、暴言、暴力などの陽性症状に有効であるとされています。
釣藤散(ちょうとうさん)も認知症のBPSDに用いることがあります。この漢方薬は、一般的には高血圧傾向の慢性頭痛などの患者さんに使われることが多いのですが、当科では血管性認知症に対する臨床研究で、会話の自発性、表情の乏しさ、夜間せん妄、睡眠障害、幻覚、妄想などに有効であったことを報告しています(図2)。BPSDの陽性症状のみならず、陰性症状にも試みてよい漢方薬ではないかと思われます。当科では基礎研究も行っており、釣藤散の血流改善作用や神経細胞保護作用なども明らかにしています。
Q:認知症に期待される漢方薬は、他にありませんか?
A:帰脾湯、八味地黄丸、人参養栄湯という漢方薬が期待できると思われます。
帰脾湯に関しては、アルツハイマー病患者さんに4か月間内服してもらい、内服期間の前後で認知機能の測定を行いました。その結果、帰脾湯を内服した4か月間では、内服しない4か月間と比較して、認知機能が維持されていたことが明らかとなりました。八味地黄丸に関しては、進行した認知症患者さんを対象とした研究で、認知機能の進行を遅らせることが既に報告されていますが、現在、私たちは軽度アルツハイマー病患者さんを対象に臨床試験を行っています。また人参養栄湯は、高齢者の食欲低下によく用いられますが、食欲低下の改善のみならず、認知機能を改善したとの報告があります。
一言メモ
- 当科では、東洋医学と西洋医学を融合した診療を行っています。漢方治療のみならず、必要に応じて西洋医学の治療を併用し、ほかの診療科とも連携をとって診療にあたっています。必要に応じて現代医学的な検査も行います。
- 当科では、医療用漢方製剤(エキス剤)のほかに、本格的な生薬(煎じ薬)による健康保険を使った診療も行っています。この場合、患者さんは自宅で煎じていただくことになります(写真)。
- 当科を受診する患者さんは、消化器疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、リウマチ・膠原病、神経疾患、糖尿病などの内科疾患のほか、皮膚科疾患、婦人科疾患、耳鼻咽喉科疾患、精神科疾患、疼痛性疾患などさまざまです。冷え症や虚弱体質など、西洋医学ではあまり治療の対象とならない患者さんも多く受診します。
0〜9
A〜Z
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- 肺塞栓症
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- 鼻・副鼻腔がん
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