膵がんなどの膵腫瘍に関する新しい検査・治療―膵臓・胆道センター

吉岡伊作／特命講師、　藤井努／教授

膵臓・胆道センターを開設しました

膵がんなどの膵臓・胆道疾患の診断・治療は、大変難しいことが多い領域であり、専門的な知識と技術が必要となります。専門家でなければ、膵がんや胆道がんはその兆候があっても正しい診断を得られず、手術も一般的な外科手術と比較して難しく、専門家でなければ切除不能と判断されてしまうことが稀ではありません。医療の進んだ現在においても、最も難治性のがんとされています。富山大学附属病院では、2018年9月に膵臓・胆道センターを開設致しました。この分野の外科、内科などの専門家がそろった施設は、北陸のみならず日本全国をみてもほとんどなく、全国初の専門的なセンターです。

膵がんなどの膵腫瘍に関する検査

膵がんなどの膵疾患の検査として、腹部超音波、CT、MRIなどがありますが、最も威力を発揮するのは“超音波内視鏡検査”です。CTなどではわからないような、小さな膵がんを発見することができ、針生検で細胞・組織を採取して正確な診断を得ることができます（図1）。膵がんを早期に診断するためには、この超音波内視鏡検査が必須といっても過言ではありませんが、この検査は極めて専門的です。本センターの安田一朗教授はその第一人者で、さまざまな膵疾患に対してこの検査を行っており、正確な診断を得ることで、タイミングを逃さず適切な治療を行うことができます。ほかに、膵臓内の主膵管に挿入して、病気の診断・進展範囲を把握する膵管鏡や、通常の内視鏡では到達できない腹部手術後の膵臓への検査を可能とするバルーン内視鏡などもあります。富山大学附属病院には最新鋭の内視鏡機器が整備されており、これらを専門家が駆使して診断を行っています。

膵がんなどの膵疾患に対する手術

膵臓の手術を安全確実に行うにも、専門的な知識技術が必要不可欠です。膵臓は腹部の奥深くにあり、周囲には重要な大血管が多く存在します。この血管を傷つけずに、病気を含めた膵臓を切除する必要があり、また膵がんは、これら血管に浸潤することが多く、動脈や門脈合併切除再建が必要となりますが、これを安全に行うことができる外科医は多くありません。本センターの藤井努教授は、膵がん手術のエキスパートであり、他院で手術不能と判断された膵がんを、数多く切除しています。最近の研究結果による手術と、抗がん剤を組み合わせた治療や、一般的には切除不能と判断されるような進行膵がんに対し、抗がん剤、放射線治療を組み合わせての血管合併切除（図2）を積極的に行っています。この分野で最難関である資格、肝胆膵外科学会高度技能医が、富山大学附属病院には6人在籍しており、これは、北陸4県でも最多です（2021年10月現在）。また、2019〜2021年には膵切除を3年継続して100例以上施行しており、これは北陸4県でも過去最高であり、この数の手術を行っているのは国内でも、10数施設しかありません。また、鮮明なハイビジョン3D画像、鉗子の多関節機能、手振れ防止機能など、多彩な機能を有するロボット支援下膵臓手術も行っています。（写真1、写真2）

図１：超音波内視鏡と針生検所見

図２：腹腔動脈合併膵体尾部切除+門脈合併切除

写真１：ロボット：da Vinci Xi、写真２：ロボット膵臓手術