ホーム

富山大学附属病院の先端医療

Q:診断・治療に役立つDual-energy(デュアルエナジー)CT―画像診断

富山大学附属病院の先端医療

放射線診断科

Q:診断・治療に役立つDual-energy(デュアルエナジー)CT―画像診断

野口京/教授

Q:CTとは何か?

A:CT(Computedtomography)とはコンピュータ断層撮影法のことであり、体内の病巣を発見するために、X線(エックス線)を使って体の断面を撮影する検査です(図1)。

CT装置のドーナツの輪に相当する部分には、通常のCT装置では、X線を出すX線管が1つはめ込まれており、体の周りを360度回転するようになっています。X線管の180度反対側には、体を突き抜けてきたX線量を測定する検出器がついています。CT撮影時には、ドーナツの輪の中で、X線管がグルグルと回りながら、X線をだし、その反対側にある検出器にて体を抜けてきたX線の量を測定して、コンピュータにて画像を作ります(図2)。

Q:Dual-energy(デュアルエナジー)CTとは何か?

A:物質のX線減弱係数(X線が通過する能力)は、X線のエネルギーに依存するという特徴があります。2つの異なるX線のエネルギーによる物質のX線減弱係数の変化率は物質固有のパターンを呈します。この特徴を画像化に利用する方法がDual-energy(デュアルエナジー)CTです(図3)。

Q:Dual-energy(デュアルエナジー)CTでは、何ができますか?

A:Dual-energy(デュアルエナジー)CTにて、ヨード、カルシウム、脂肪、鉄などの物質の分別や、その量を計測することができます。具体的には、尿管結石と石灰化結石の区別、痛風結石の診断、肺動脈血流の評価、脳出血とヨード造影剤との区別、ヨード造影剤コントラストの増強、金属アーチファクト(画像作成時に発生する実際とは異なる画像)の低減などが可能です。

Q:Dual-energy(デュアルエナジー)CTは実際にはどのような場合に役立っているのか?

A:Dual-energy(デュアルエナジー)CTにて、致死的な疾患である肺動脈塞栓症(エコノミー症候群)の診断精度をあげることができます。Dual-energy(デュアルエナジー)CTにて、通常の造影CTでは評価ができない肺実質に分布する微量なヨード造影剤を描出することで、肺動脈血流を画像化することができます(図4)。

Dual-energy(デュアルエナジー)CTにて、造影CT画像から仮想の非造影(単純)CT画像が作成できます。最近、急性期脳梗塞に対して血栓回収術が施行されており、その治療直後の評価には、出血の有無を確認するために、単純CTを撮像します。その単純CTにて脳実質やくも膜下腔に高吸収を認めた場合には、血栓回収術中に使用したヨード造影剤の漏れ出しなのか、あるいは新しい出血なのか、通常のCTでは両方とも同じように白く見えることから、その区別が難しい場合があります。Dual-energy(デュアルエナジー)CTであれば、造影剤と新しい出血を簡単に区別することができます。

血栓回収術直後の通常のCTでは、矢印の部分に白く見える病変があり、ヨード造影剤の漏れ出しか、新しい出血のどちらかが考えられます。Dual-energy(デュアルエナジー)CTのヨード画像では白く見えていますが、仮想非造影(単純)CTでは白い病変がはっきりせず、白く見えていたものは、出血ではなくヨード造影剤の漏れ出しであると診断できます(図5)。

Q:当院で開発中のDual-energy(デュアルエナジー)CTによる“X-Map”とは

A:当院では、頭部のDual-energy(デュアルエナジー)CTによる新しい画像を開発しています。“X-Map”と名付けた画像にて、急性期脳梗塞を鋭敏に検出することができています(図6)。現在も開発中です。

図1:CT装置 CTは、このような巨大なドーナツのような装置です。真中の穴の部分には、移動式の寝台があり、仰向けに寝て撮影されます。

図1:CT装置 CTは、このような巨大なドーナツのような装置です。真中の穴の部分には、移動式の寝台があり、仰向けに寝て撮影されます。

図2:X線管と検出器

図2:X線管と検出器

図3:2つのX線管を有するCT装置

図3:2つのX線管を有するCT装置

当院では、2つのX線管を有する高性能のCT装置を導入しており、低いエネルギーと高いエネルギーの2種類のエネルギーにて同時に撮影することができます。

図4:肺動脈塞栓症(エコノミー症候群)

図4:肺動脈塞栓症(エコノミー症候群)

Dual-energy(デュアルエナジー)CTにて、左肺下葉の肺動脈血流の欠損(矢印)、および左肺下葉の肺動脈の閉塞(矢印)が明瞭に示されています。

図5:急性期脳梗塞に対する血栓回収術後

図5:急性期脳梗塞に対する血栓回収術後

図6:発症0.5時間の急性期脳梗塞

図6:発症0.5時間の急性期脳梗塞

通常のCTでは病変を指摘できないが、Dual-energy(デュアルエナジー)CTから作製されたX-Mapでは、矢印の部分に早期の脳梗塞が示されています。およそ1時間後に撮像されたMRIの拡散強調画像による病変部位とよく一致しています。

0〜9

A〜Z

あ行

か行

さ行

た行

な行

は行

ま行

や行

ら行

わ行