富山大学附属病院の先端医療
Q:先天性の神経の病気、腫瘍から子どもをまもる―頭蓋骨縫合早期癒合症、水頭症、二分脊椎、小児脳腫瘍
赤井卓也/診療教授
Q:子どもの頭のかたちが気になります。
A:頭蓋骨は、骨パネルの組み合わせでできています。その骨パネルのつなぎ目を、骨縫合といいます。子どもの骨は、2歳まで急速に成長し、その後は、一定のペースで15歳(女子)から18歳(男子)頃まで成長します。ところが、骨縫合が予定より早く完全に閉じると、その部分の頭蓋骨が成長できなくなり、頭の形がゆがみます(頭蓋骨縫合早期癒合症)。頭のゆがみは、脳に影響して、発達の妨げとなることがあります。また、頭の骨は顔の骨に繋がっているため、顔までゆがむことがあります。早く閉じてしまった骨縫合の部位によって、頭の形は異なります(図1)。両側の横方向の骨縫合が早く閉じる(太線)と、前後が短い頭になります(短頭蓋)。その片側の縫合だけが閉じると、片側が平らな頭になります(斜頭蓋)。前頭部中央の縫合が閉じると、額が尖ります(三角頭蓋)。中央の縫合が前から後ろまで閉じると、前後に長い頭になります(舟状頭蓋)。いくつも縫合が閉じると、どちらへも頭蓋骨が大きくなれないため、骨パネルが曲がって、正面から見るとクローバーの葉のようになります(クローバー頭蓋)。この場合は、頭の中の圧が高くなり、長くそのままにすると、眼が見えなくなることもあります。
診断は、頭のかたち、頭の大きさ、早く閉じた縫合を触る(でっぱりとして触れます)ことで予想し、頭部CTで診断を確定します。一方、頭の形がゆがんでいても、病気ではなく「ねぐせ」のことがあります。同じ姿勢で眠っていると、下になった骨が圧迫されて平らになります。真上を向いていると、後ろ頭が平らになり、少し横をむいて眠るくせがあると、斜め後ろの頭が平らになります。1度、平らになると、そこを下にして眠ると安定するので、その姿勢を好むようになり、より平らになります。
治療は手術になります。脳の成長を妨げないように、頭蓋骨を切って外へ向かって拡大します。早く閉じた縫合のみ切り取る方法、骨切り後に骨パネルを移動して固定する方法、骨切り後骨延長器を取り付けて少しずつ頭蓋骨を拡大する方法があります。
Q:子どもの頭が大きいように思います。
A:頭の骨がある程度固まるまでは、頭に水(脳を包む脳脊髄液)がたまると、頭が大きくなります。頭に過剰な水がたまった状態を水頭症といい、手術が必要な子どもの神経の病気で最も多いものです。母子手帳に頭の大きさを記入すると、少しずつ平均より大きくなってきていることが分かります。お母さんのお腹の中にいるときに、超音波検査で分かることもあります。頭に水がたまると、元気がなくなり、食欲が低下します。さらに悪くなると、吐いたり、眠りがちになったりします。年長児になると「頭が痛い」と言います。
診断は、頭の大きさの変化(母子手帳の記録)、頭部CT・MRIで判断します。
治療は手術になります。水を入れている脳の部屋(脳室)とお腹をチューブでつないで、お腹で水を吸収させる手術(シャント手術)が基本です。2歳以降であれば、脳の中で新たに水が流れる路をつくる内視鏡手術で治療できることもあります。
Q:おしりにへこみがあります。
A:背中からおしりの中央部にへこみ・あざ・ほくろ・ふくらみがあるときは、その下の骨が分かれていることがあります(二分脊椎)。二分脊椎は、①脊椎が分かれているだけの場合(潜在性二分脊椎)、②脂肪が脊椎の管のなかに取り込まれている場合(脊髄脂肪腫)、③神経が外に出ている場合(脊髄髄膜瘤)があります(図2)。神経が外に出ているときは、生まれたときに見つかります。それ以外の場合は、外から見ただけでは分からないことが多いです。仙椎(脊椎の最も下のところ)が分かれているだけでは、問題ありませんが、それより上の腰椎、胸椎が分かれているときは、腰痛や側弯(背骨が曲がる)を起こすことがあります。骨だけでなく、神経が外に出ていたり、脂肪が取り込まれていたりすると、脊髄の神経が弱り、うまく歩けない、歩くと足が痛くなる・しびれる、便秘がひどい、尿がうまくでないなどの症状が出ます。
診断は、その部分の皮膚の状態と、脊椎CT・MRIで行います。CTでどの骨が分かれているか判断し、MRIで神経の位置、脂肪の取り込みを判断します。
治療は、①のときは、通常治療は要りません。ただ、激しい運動をすると腰痛が起こることがあります。②のときは、脂肪と神経のつながりをなくす手術が必要です。③で神経が外から見えるときは、生まれてすぐに手術が必要です。手術で、外に出た神経をもとの位置にもどし、神経を包む管をつくり、皮膚を閉じます。神経が見えないときは、生まれて1か月以内に手術をすることが多いです。
Q:ときどき吐くけど、胃腸の薬を飲んでもよくなりません。
A:吐いて、元気がないときの多くは、かぜによる胃腸炎ですが、まれに、脳腫瘍が原因のことがあります。子どもの脳腫瘍は水頭症を併発していることが多く、胃腸炎に似た症状が出ます。治療を受けていても症状が良くならないときは、要注意です。脳腫瘍の場合、症状が出始めると日ごとに悪くなっていきます。乳児から幼児では、お座りができなくなった、よく転ぶようになった、歩かなくなったといった運動発達の後戻りで見つかることがあります。
診断は、頭部CT・MRIになります。症状が分かり難いので、診断が決まるまで時間がかかることがあります。診断がつき次第、急いで手術が必要になることがあります。
治療は、腫瘍の部位と腫瘍の種類によって異なります。水頭症を併発しているので、その治療も同時に行います。薬や放射線治療がよく効く腫瘍では、手術で腫瘍の一部を取り出し、その種類を確定した後に薬の治療から始めます。一方、手術以外の治療があまり効かない腫瘍の場合は、手術でできるだけ腫瘍を取り除いた後、薬や放射線治療を行います。
0〜9
A〜Z
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