富山大学附属病院の先端医療
Q: 発熱がなかなか引かない場合の診断・治療―発熱
篠田晃一郎/診療教授
Q:何℃以上を発熱と呼びますか?
A:私たちの正常体温(平熱)は36.5℃前後で、「発熱」とは医学的には37.5℃以上の場合を指します。37℃〜37.4℃までを微熱、38.5℃以上を高熱と表現します。しかし、正常体温には個人差があり、体温は日内変動(朝低く、夜に向けて上昇)もあるため、総合的に判断する必要があります。
Q:発熱が持続するのは、どういう場合ですか?
A:発熱の原因として1番多いのが、感染症つまり風邪、インフルエンザ、はしか、風疹、水疱瘡、肺炎などさまざまな微生物に起因するものです。体内に微生物が侵入すると、私たちの体は、生体防御のための働きで発熱します。つまり、発熱することでウイルスや細菌類の増殖を抑える働きや、体の免疫系を活性化する働きもあるのです。なお、このような感染症は、頭から足の先まで至るところで起きる可能性があるので、発熱した場合には、どんな微生物がどの臓器に感染しているかを調べるため、自覚症状や他覚症状の問診や、血液検査、X線検査などが必要です。
多くの感染症は、このように原因を追及することで病名が判明しますが、それでも発熱の原因が分からないことがあります。38.3℃以上の発熱が3週間以上持続し、3回の外来受診、あるいは3日間の入院でも原因不明な場合、医学的には『不明熱』と呼びます。不明熱の原因としては、前述の感染症に加え、悪性腫瘍(がんなど)、薬剤アレルギー、膠原病などがあります(表1)。
悪性腫瘍が原因で起こる発熱を『腫瘍熱』と呼びますが、その種類によって腫瘍熱をきたす頻度が異なり、悪性リンパ腫・腎細胞がんは発熱の頻度が高いと言われています。しかし、あらゆる悪性腫瘍に発熱の可能性があるので、不明熱が持続する場合は、全身の悪性腫瘍のチェックが必要です。
次に、薬剤熱ですが、これはあらゆる薬剤により引き起こされる可能性のある発熱のことで、原因薬剤投与後に比較的早く起こります。発熱だけなく、皮膚症状や筋肉痛などの症状を併発することがあり、薬剤投与の開始時期と、症状の出現時期を詳細に確認する必要があります。多くの薬剤熱は、原因薬剤を中止することにより改善します。
Q:膠原病って、どんな病気ですか?
A: 発熱が持続する代表的な病気に、「膠原病」があります。“膠”の文字は、「にかわ」と読み、接着剤を意味しますが、私たちの体にも膠の役割を担う「結合組織」といわれる部位が全身に広がっており、これらの場所に原因不明の炎症をきたす疾患を総称して『膠原病』と表現します。
膠原病は1つの病気を指すのではなく、複数の病気を包含する総称で、具体的にはさまざまな疾患を含みます(表2)。これらの多くは原因が分かっていませんが、体に侵入した微生物を排除する際に働く免疫系に乱れが生じ、誤って自分の体のさまざまな臓器を攻撃して起こるため、自己免疫疾患の範疇に入ります。また、原因不明で治療が困難なため、厚生労働省の特定疾患に認定されて公費対象となっています。
これらの疾患では、発熱だけでなく、関節痛、筋肉痛、発疹、リンパ節腫脹、レイノー現象(寒冷刺激やストレスにより手足の血流が低下し、皮膚の色調が赤色→白色→青色へと変化する現象)、ドライアイ、ドライマウスなどさまざまな症状を伴います。診断には、症状に加えて血液検査や画像検査などが重要で、近年がんの評価に用いられるPET-CT検査の不明熱診断に対する有用性も報告されています(写真)。これらの情報を参考に診断や治療を行い、治療は主に、ステロイド剤や免疫抑制剤などの強力な免疫抑制作用を持つ薬剤を使用するため、副作用の管理を十分に行うことが必要です。
なお、不明熱をきたす稀な疾患として、自己炎症症候群という疾患群があります。代表的な疾患である家族性地中海熱の特徴は、無治療でも軽快する周期性の発熱、関節炎などです。診断には症状や血液検査以外に、遺伝子診断が用いられます。
当院の免疫・膠原病内科では、不明熱の原因精査やリウマチ、膠原病の診断と治療など、幅広い診療を行っていますので、お困りの方はぜひ相談してください。
一言メモ
- 発熱の原因としては感染症が主なものですが、ほかに悪性腫瘍や薬剤アレルギー、膠原病などがあります。
- 膠原病は、発熱以外にさまざまな症状を引き起こすため、これらを総合的に判断して診断や治療を行います。
- 膠原病の多くは、厚生労働省の特定疾患に指定されており、医療費の自己負担額軽減のための申請手続きが可能です。
0〜9
A〜Z
- ABO血液型不適合腎移植
- AIDS
- AS
- AYA世代
- BIA-ALCL
- BPA
- BRACAnalysis検査
- Brain Heart team
- B型肝炎ウイルス
- CGM
- CIDP
- CT
- CTEPH
- C型肝炎ウイルス
- DBS
- Dual-energy(デュアルエナジー)CT
- ER
- ESD
- FFR CT検査
- HbA1c
- HBOC
- HIV
- HPV
- IMRT
- LCIG
- LGBTQ+
- LVA
- MS
- Multiple LVA
- NICU
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- Qスイッチルビーレーザー
- R-CHOP療法
- RRM
- rt-PA療法
- SARS-CoV-2
- ST
- Stanford B型急性大動脈解離
- TAVI
- TIA
- WATCHMAN
- X-Map
あ行
か行
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- 化学療法(抗がん剤治療)
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- 画像診断
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- 肝硬変
- 肝細胞がん
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- 奇異性塞栓
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- 機能温存
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- 救急医療
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- 誤嚥防止手術
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- 骨軟骨柱移植
- 骨盤臓器脱
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さ行
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- 手術支援ロボット(ダビンチ)
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- 靱帯損傷
- 心不全
- 腎部分切除術
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- 生活療養指導
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- 前立腺がん
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- 僧帽弁閉鎖不全症
- 続発性不育症
- 咀嚼・嚥下障害
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た行
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- 大腸ポリープ
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- 唾液腺がん
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- 炭酸ガスレーザー
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- 中耳加圧治療
- 超音波ガイド下経気管支針生検
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- 超音波骨メス
- 長期フォローアップ
- 調節性内斜視
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- 治療抵抗性統合失調症治療薬
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- 低侵襲
- 適応障害
- 手外科
- 手の病気
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- 頭頚部
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- 糖尿病
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- 動脈硬化
- 特異性IgE抗体
- 特発性肺動脈性肺高血圧
- トモシンセシス
- とやまパラドックス
- トランスジェンダー女性
- トランスジェンダー男性
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な行
は行
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- 肺高血圧症
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- 培養脂肪幹細胞
- 肺葉切除術
- 発熱
- 鼻・副鼻腔がん
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