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富山大学附属病院の先端医療

Q:下肢静脈瘤、うっ滞性皮膚潰瘍の治療―下肢静脈瘤、うっ滞性皮膚潰瘍

富山大学附属病院の先端医療

第一外科

Q:下肢静脈瘤、うっ滞性皮膚潰瘍の治療―下肢静脈瘤、うっ滞性皮膚潰瘍

長尾兼嗣/特命助教

Q:下肢静脈瘤とはどんな病気ですか?

A:下肢静脈瘤とは、遺伝や立ち仕事が原因で下肢の静脈の弁が壊れ、血液が逆流、うっ滞をおこしてしまうために、足にポコポコしたコブが生じてしまう病気で、日本人全体の43%が罹患しているといわれる、とても頻度の高い疾患です。立ち仕事や、妊娠・出産、肥満、加齢などが原因といわれています。

静脈瘤に伴う症状は、頻回のこむら返りや、浮腫みといった下肢の症状から、かゆみや茶色い色素沈着といった皮膚症状、さらに重症になると、脛(すね)に潰瘍を生じてしまいます。下肢静脈瘤という疾患自体は、命に関わる病気ではありませんが、上記のような症状で生活の質を落としてしまう可能性があります。

Q:一般的な治療はどのようなものですか?

A:一般的な治療法は3つあります。1つ目は圧迫療法です。静脈瘤治療用のストッキングや、包帯により外部から圧迫をかけることで、静脈瘤由来の症状を軽くし、病気の進行を遅らせます。2つ目は硬化療法です。限局したコブに対し、硬化剤を注射し、コブを消していきます。3つ目は手術です。根本的に、治すためには手術以外の選択肢はありません。手術方法としては、レーザーなどの血管内治療が普及してきており、メスを入れずに治療することができるようになっています(写真1)。血管内治療の場合、術翌日から元の生活に戻ることができます。術後は1週間後、1か月後の2回の外来通院が必要です。

血管内治療の普及に伴い、気軽に手術を受けられるというメリットから、数多くの病院で治療が採用されました。その結果、血管外科の専門ではない病院でも治療が行われ、不必要な手術を行う施設が増え、学会からも手術適応の判断について注意喚起が行われています。

下肢静脈瘤の原因となる大伏在静脈という血管は、将来心臓や足の動脈のバイパス手術の際に使われる大切な血管です。正しい検査と正しい評価を行わず、不必要な手術をしてしまうと将来本当に必要になった際に血管が足りなくなってしまいます。

Q:うっ滞性皮膚潰瘍とはどのような状態ですか?

A:静脈瘤の最重症の状態として、うっ滞性皮膚潰瘍があります。静脈瘤が原因で、脛の周りに静脈血がたまり、皮膚に潰瘍が生じてしまいます(写真2)。この潰瘍は静脈瘤が原因なので、静脈瘤の治療をしないと治りませんが、なかなか原因が分からずに軟膏を塗って治療している場合が多いのが現状です。原因が静脈瘤と分かれば、圧迫療法や手術を行い治療することができます。

Q:附属病院ではどのような治療をしていますか?

A:一般的な静脈瘤の治療に加え、うっ滞性皮膚潰瘍に対する血管内レーザー治療を行っています。通常は圧迫療法が主な治療法ですが、痛みやストッキングに対する違和感などのため、継続が難しいことが多く、そのような患者さんに対しては、超音波検査で原因をしっかりと評価した上でレーザー治療を行います。原因となっている静脈をレーザーで焼灼し、うっ滞をとることで潰瘍の治癒が見込めます(写真2)。一般的なレーザー治療に加え、潰瘍周囲の静脈に対しても治療を行うので、効果も出やすくなっています。我々が独自に工夫した術式であり、実施している施設は非常に限られています。当院でこの手術を受けられた患者さんの9割以上に、1年以内での潰瘍の改善が認められています。

下肢静脈瘤は、とても頻度の高い疾患であり、血管内治療を含めさまざまな治療法があります。

当院では、血管内治療の資格だけでなく、圧迫療法についても資格を持った医師が複数在籍しており、患者さんの病態や生活状況に合わせた治療法を提案しております。当院の静脈瘤専門外来は毎週火曜日に開設しております。

一言メモ

  1. 下肢静脈瘤は非常に頻度の高い病気ですが、命に関わることはありません。
  2. 血管内治療など、低侵襲な治療法が普及してきています。
  3. 正しく評価して治療しないと、将来の大きな手術の際に影響が出る可能性があります。
  4. うっ滞性皮膚潰瘍に対するレーザー治療で潰瘍改善が見込めます。
写真1:下肢静脈瘤に対するレーザー治療機器

写真1:下肢静脈瘤に対するレーザー治療機器

写真2:鬱滞性皮膚潰瘍に対し血管内治療を行った症例

写真2:鬱滞性皮膚潰瘍に対し血管内治療を行った症例

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