ホーム

特集

アーカイブ

富大病院最前線

人工心臓治療 早期の導入へ

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第30回

人工心臓治療 早期の導入へ

循環器内科長 腎・高血圧内科長

絹川 弘一郎

今月1日、富大第2内科教授に就任したことに合わせ、附属病院で心臓病や腎臓疾患、高血圧などをカバーする循環器内科と腎・高血圧内科を担当することになった。初めての富山勤務に気持ちを新たにし、「診療の質と数を上げ、新しい治療法をどんどん進めたい」と力を込める。 二つの診療科のうち、循環器内科が取り組む新しい治療法として、今年5月に北陸の医療機関で附属病院が初めて成功した手術を挙げる。大動脈弁狭窄(きょうさく)症という心臓の弁が狭くなり、血液の流れが悪くなる疾患の患者に対し、カテーテルを使って心臓に人工弁を取り付ける「経カテーテル的大動脈弁置換術」(通称・TAVI)である。メスで胸を開くことがなく、患者への負担は従来と比べて格段に小さくなった。この数カ月で患者9人に実施しており、高度医療の推進に意欲を示す。 循環器内科では、慢性心不全や閉塞(へいそく)性動脈硬化症の患者に「和温療法」といった特徴的な治療も施している。附属病院のこれまでの取り組みを評価し、自らが中心となって、こうした取り組みをさらに前へ進める。 過去10年近く、東大で心臓移植や人工心臓の治療に携わった。現在、北陸では人工心臓の治療を手掛ける病院はない。附属病院に赴任して間もない今月上旬、人工心臓の移植が必要となった60代女性を東大へ移すことになった。

 

●医療は地域内で完結

人工心臓の移植手術を受けるまで、患者が3、4年待たされることもあるという。前任地ではそんな患者と毎日顔を合わせ「何とかしてあげたい」と思うことも多かった。 そんな思い入れのある治療法が、自らが着任したことで附属病院でも導入される可能性が出てきた。「地域間で医療に差があってはいけない。医療は地域内で完結させないといけない」と指摘し、心臓外科などと協力しながら、できる限り早期の導入につなげたい考えだ。 富山で暮らして間もなく1カ月。この地にしっかりと根を張り、地域医療を充実させるため、全力を尽くす。

きぬがわ・こういちろう 福岡県出身。東大医学部卒後、東大医学部附属病院に勤務。東大重症心不全治療開発講座特任教授などを経て、今月1日から富大附属病院の循環器内科長、腎・高血圧内科長。富大第2内科教授。
絹川 弘一郎