生活習慣病、「つい」に注意
第1内科診療部門代謝・内分泌内科診療科長
戸邉 一之「料理があまるともったいないので食べてしまう」「スーパーなどでおいしそうなものが並んでいるとつい買ってしまう」。思い当たる節がある人は多いのではないだろうか。糖尿病やメタボリック症候群などの原因となる行動の一例だ。 生活習慣病の原因に共通するキーワードは「つい」だという。無意識でやっていることが多いため、患者本人に気付いてもらうことが治療の第一歩だ。「日常生活は私たちには変えられない。自覚し、行動を変えてもらうことが大切」と語り、図表を使った分かりやすい診察を心掛ける。
内臓脂肪型の肥満が一因となって、脳卒中や糖尿病などの危険性が高まるとされるメタボリック症候群。患者は増加の一途をたどっているが、なぜ脳卒中や糖尿病が引き起こされるかというメカニズムはまだ解明されていない。
●治療薬開発が目標
仮説として、脂肪細胞の増加や肥大による低酸素状態が、血中の悪玉物質を増やして病気の原因になっていると考え、研究が進められている。「患者の治療の選択肢を広げたい」。メカニズムを解明し、原因から治療する薬の開発が目標だ。
学生や若手医師の指導では、全身の疾患を総合的に診療できる内科医の育成を目指す。「患者の話に耳を傾け、どんな暮らしをしているのかをイメージできるようになってほしい」。患者の生活に寄り添い、診療方針を立てられる医師になってほしいと願う。
●診療体制整備が急務
現在、国内の糖尿病患者は約1千万人とされる。団塊の世代が発症しやすい年代に差し掛かり、患者はますます増加することが予想される。日常的に患者を見守る地域の「かかりつけ医」と連携し、役割を分担して診療に当たる体制整備が急務だ。
病院内でも、医師だけでなく、看護師や栄養士、薬剤師らと協力し、患者を多角的に支える体制の強化が必要と指摘する。「糖尿病やメタボを改善することが、地域の健康寿命を延ばすことに直結する」。高まる役割に力がこもる。