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富大病院最前線

「一期一会」で画像と対話

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第19回

「一期一会」で画像と対話

放射線科長

野口 京

患者に面と向かって症状を尋ねることはない。放射線診断専門医として日々、対話するのは患者の体内を撮影した画像である。「画像診断は一期一会で臨む。最高の読影をしたい」とパソコンの黒い画面に鋭い視線を送った。
患者の主治医からパソコンに送られてくる診断依頼をもとに、コンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)など適切な検査を判断する。撮影した画像を見て、悪性腫瘍の有無、病名や進行具合、今後の治療方針の助言までリポートにし、主治医に送り返す。こうした一連の流れを読影と呼ぶ。
読影は、外科や内科の幅広い知識を備えていなければこなせない。自身は、とりわけ難解とされる頭部の画像を読み解くスペシャリストだ。「放射線科に入局し、最も難しいと感じた領域だった」と頭を指さし、専門選定の理由をこう語った。未知の領域に挑戦する好奇心が医療活動の原動力になっているようだ。
多忙を極める現場医師の負担を減らすためにも、果たす役割は大きい。「リポートに添える画像そのものも報告書になるようにしたい」と最新の撮影技術を駆使し、陰影を濃くした分かりやすい画像を作り上げていく。

 

●常に疑問を持って

最も重要と心得るのは、個々の症例から学ぶ姿勢だ。日々、同じように見える症例でも詳細に観察し、小さな違いを注意深く拾い上げる。最適な治療を可能にする読影は「常に疑問を持ち、考えることから生まれる」と言い切る。
放射線治療や、血管内に細い管を入れて病気を治す「血管内治療」に専門医を配置する。がんの形状に合わせて線量や照射角度を微調整する最新の「強度変調放射線治療(IMRT)」を導入している。切開を必要としないことで患者負担も少なく、放射線治療の症例は2013年、約330例に上った。
ただ、マンパワーの不足は課題だ。「画像診断や放射線治療の研究環境を整え、新しい人材を一人一人、確保していきたい」。放射線科の将来もしっかり見据えている。

のぐち・きょう 石川県能登町(旧柳田村)生まれ。富山医薬大(現富大)医学部卒。秋田脳血管研究センター勤務を経て、2013年から富大大学院医学薬学研究部(医学)教授。
野口 京