痛みの緩和究極の奉仕
麻酔科診療科長
山崎 光章「医療そのものがサービス業ですが、その中でも麻酔科は究極のサービス業だと思っています」
麻酔科の仕事の根幹は、手術時の全身麻酔である。まず診察を通して、患者にとって、どの種類の麻酔が最も適切で、安全かを見極める。手術中の痛みを無くし、不安を和らげる。手術後も、患者が痛みを感じていないか経過をしっかりと見て、速やかな社会復帰の実現につなげる。
人間の苦しみの源である「痛み」を緩和するため、常に患者のことを考え、できる限りのことをする。「究極のサービス業」と表現するゆえんである。
痛みという感覚は人間が危険を察知し、命を守るために必要な側面もある。しかし、それも程度問題で、手術後に痛みが続くと、感染症になりやすくなったり、血糖値が上がるなど、さまざまな悪影響があることが分かってきた。
一昔前、手術後の痛みを訴える患者に鎮痛剤を投与して治まらない場合、「しょうがない」とする時代もあったが、今では「痛みを緩和すること自体が治療」なのである。
「痛み緩和のプロ」の技を生かし、麻酔科では、慢性的な痛みを治療する「ペインクリニック」を開設している。頭痛や帯状疱疹(ほうしん)、顔面に痛みが生じる三叉(さんさ)神経痛、顔面の痙攣(けいれん)など対象は幅広い。腰の手術を繰り返した後に続く難治性の痛みに対し、カテーテルを用いて炎症や癒着を起こしている部位に直接、薬剤を投与する治療も4月から始めた。北陸ではいち早い取り組みである。
●心のケアが不可欠
慢性的な痛みの害は身体面だけにとどまらない。「痛みが心の問題を招き、心の問題が痛みを増強する。ペインクリニックでは心のケアが不可欠です」。月1回、麻酔科と整形外科、理学療法士に加え、精神科や心理学の専門家も参加し、よりよい痛み治療のための検討会を開いている。
県内で麻酔科医不足が続く中、若手の育成にも力を注ぐ。心の中にあるのは、「常に患者のために」という「究極のサービス業」の責任感である。