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富大病院最前線

子どもの笑顔を心の支えに

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第12回

子どもの笑顔を心の支えに

第1外科診療部門・小児循環器外科診療科長

芳村 直樹

小児心臓外科が専門で、先天性心疾患の治療に当たる。執刀する手術のうち約6割が1歳未満で、1人の子どもが2〜4回の手術を受ける。「相当難しい手術でも、小さな身体で持ちこたえてくれる。子どもたちの生きる力にいつも助けられている」と語る。

 

●治療で9割成人に

先天性心疾患のある子どもは、100人に1人ほどの割合で生まれるが、治療を受ければ、9割以上が成人を迎えることができるようになった。小児科、内科などとのチーム医療で、適切な時期に、適切な手術を行うことができるよう連携する。元気になった子どもたちの笑顔と、成長を喜ぶ家族の姿が心の支えだ。
富大は、北陸の小児心臓病診療のセンター施設として位置付けられている。成人の手術と合わせ、第1外科では2014年に過去最多となる700例以上の手術を実施した。原動力となっているのは「北陸の外科医療を支える」という強い思いだ。
今年からは、患者の身体への負担が軽い方法で大動脈弁狭窄(きょうさく)症を治療できる「経カテーテル大動脈弁置換術」や、心房中隔欠損症のカテーテル治療を新たに導入する。「世界水準で普及している治療が北陸で受けられないことがあってはいけない」と語り、医療技術の向上に力を注ぐ。

 

●やりがい伝える

地域の人々が富大に求めるのは「外科医を育て、地域を支えること」。一方、高齢化で患者が増え、治療の幅も広がり、外科医不足は深刻である。5年前、教授に就いた後、「現場の思い、迫力が必ず心を動かすはずだ」との信念で、若い医師や学生に外科医のやりがいを伝えることに心を砕く。外科に興味を持ち、志す学生が増えてきたと手応えを感じている。
生命に関わる緊急の手術も多く、人員は決して十分ではない。「正直、なんとかぎりぎり踏みとどまっている状態」と苦笑する。志のある若い医師が、現場で活躍してくれる未来を思い描き、「今が正念場」と表情を引き締めた。

よしむら・なおき 堺市出身。神戸大医学部卒、神戸大大学院医学研究科修了。兵庫県立こども病院心臓血管外科医長、富山医薬大(現富大)第1外科講師などを経て、2010年から富大教授。
芳村 直樹