地域支える医師を育成
病院長補佐・第2外科診療准教授
長田 拓哉富大の医師でつくる富山大学医師会の設立に実行委員として奔走した。「大学として富山の医療向上に何ができるか」。今年7月の発足後、地域医療を支える人材の育成に向け、環境整備に知恵を絞る。
これまでは医師会活動に参加する大学の医師が少なく、県内の開業医とのコミュニケーションは十分とは言えなかった。地域医療の重要性が高まる中で「待っていてはいけない。こちらから出向き、地域にとけ込んで顔の見える付き合いをしたい」と力を込める。
富大医師会の設立に合わせ、今年から大学の医師が富山市・医師会急患センターの輪番制に加わり、重症患者を受け入れる「二次救急医療」だけでなく、初期の救急医療にも携わる機会をつくった。大学の医師が県・市の医師会で最新の医学情報を提供したり、地域の開業医が大学の授業で講師を務めたり、交流も活発化している。
「地域に根差した医師を育てたい。そのためには大学だけで教育するのでなく、富山全体で守り育てる必要がある」。今年度は医学生が臨床研修を受ける病院を選ぶ「マッチング」の内定者も増加しており、医師会活動を生かして医師の県内定着につなげたいと意気込む。
自身の専門は乳腺・内分泌外科で、がんの治療法や転移のメカニズムなどを研究している。富大の特色を生かし、和漢医薬学が盛んな薬学部と連携して「がんに効く漢方」の探索も進めている。
●病院食に工夫
病院の栄養サポートチーム(NST)にも関わり、栄養や病気の状態を考慮した病院食の提供にも力を注ぐ。海の幸に愛着を持つ富山の患者のため、病院食では珍しい「昆布締め」を採用。地元で生産された食材を積極的に活用し、食の面からも患者の早期回復を後押ししている。
医師会活動から研究まで多岐にわたる取り組みに共通するのは「患者さんのために何ができるか」。穏やかな表情に、強い信念がのぞいた。