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富大病院最前線

自分で歩ける時間延ばす

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第15回

自分で歩ける時間延ばす

整形外科診療科長

木村 友厚

骨折、肩凝りや腰痛、スポーツによる障害、リウマチ、骨軟部の腫瘍(しゅよう)。整形外科の診療領域は幅広い。富大附属病院では、各領域に計17人の専門医が配置されている。
例えば、切断された骨や血管、神経をつなぐスペシャリストがおり、県内で同じ手術ができる病院はごくわずかだ。県内の医療機関で昨年初めて「自家培養軟骨」を使う手術を成功させた医師もいる。そんな専門集団をサポートするリーダーを務め、「常に世界のトップレベルを目指す気概を持ってほしい」とさらなる治療技術の向上を促す。

 

●専門はリウマチ

自身はリウマチ関節外科を専門とし、リウマチや変形性関節症を診断する。最も大事にしているのは「患者が自分の意思で動き回れる時間を延ばすこと」に尽きると言う。
膝の軟骨がすり減り、膝が曲がり、重症化すれば、いずれ歩けなくなる。高齢者に多く見られる変形性関節症は、国内で約800万人に上るとされる。「先生、また歩けるようになったちゃ」。手術で変形性関節症を克服した患者の笑顔は励みだ。
ただ、手術に至る前にできることはないか。日常生活の予防の大切さを強調する。「もし『片足立ちで靴下が履けない』『家の中でつまずいたり滑ったりする』ようなら注意ですよ」。これに当てはまると、寝たきりや要介護の原因となるロコモティブシンドローム(運動器症候群)の可能性が高い。

 

●ロコモ体操薦め

このため、外来や健康指導では軽いスクワットやフラミンゴのように片足で立つ「ロコモ体操」を薦める。団塊世代が後期高齢者となる2025年を控え、日常診療を含めた整形外科の役割はますます重要になると考えている。
歯科医師の父の背中を見て医師の道に進み、関節の破壊阻止や再生の研究に打ち込んだ。富山に赴任して15年。若い頃より、リウマチの薬や人工関節は格段に進歩したが、「現状に満足は許されない」と心に刻む。関節の破壊を防ぐ最良の治療を求め、挑戦に終わりはない。

きむら・ともあつ 大阪市出身。阪大医学部卒。同大附属病院講師、大阪労災病院整形外科部長などを経て、富大医学部整形外科教授。日本整形外科学会理事。
木村 友厚