時代の病治す使命感を胸に
副病院長(経営担当)
布施 秀樹専門とする泌尿器科は、今の時代が抱える問題と密接に関わっていると、つくづく感じている。
「キーワードは高齢化社会、ストレス社会、そして少子化。泌尿器科の役割は、これから、ますます重くなっていく」 高齢化の進展は、中高年男性に多い「前立腺がん」の患者をさらに増やすだろう。年をとって男性ホルモンが低下したところに、ストレスを受けると、うつに似た症状の「男性更年期障害」に襲われかねない。ストレスは「ED(勃起不全)」にもつながる。
そうした切実な悩みに日夜、向き合っている。
前立腺がん治療では、小さな切り傷で済む腹腔鏡(ふくくうきょう)手術に力を入れ、年間数十例をこなす。手術の精度と安全性をさらに高めようと、手術支援ロボットの導入も目指す。富山県内で唯一の男性向け不妊治療の専門外来には、年間100〜150人もの初診患者が訪れる。「時代の病」を治す重責を担う。
●常に患者の目線で
次世代を背負う医学生たちには、こう語りかける。「教科書は一般論だが、患者は生身の人間。一人一人が異なる背景を持っている。常に患者の目線でものごとを考えなさい」
さまざまな患者に接してきた。
精巣がんで、普通なら子どもをあきらめざるを得ない状況の男性がいた。だが、精子を凍結保存し、体外受精で元気な赤ちゃんが生まれた。腎臓がんが心臓近くまで達し、生きる希望を失った女性がいた。心臓外科と連携し、10時間以上に及ぶ手術の末、一命を取り留めた。「やったかいがあった」。患者の喜びが原動力になる。
今、経営担当の副病院長を任されている。心がけるのはバランス感覚と先を見通す目である。「例えば、手術ロボットのような先端医療の導入は、目先だけを考えれば、必ずしも採算性がよいわけではないが、その成果は最終的に患者のプラスになる」。刻一刻と変わる時代の中で、富大附属病院が果たすべき使命を常に考えている。