漢方の心で信頼の医療
副病院長(医療の活動及び環境整備担当)
嶋田 豊現代医学の医師であり、漢方の専門家である。1975(昭和50)年に設置された旧富山医薬大の1期生で、同大の建学理念である「東西医学の統合」の精神を胸に刻みながら、より良い医療を提供できるよう心を砕いてきた。
医学部生時代から、学内の漢方サークル「赭鞭(しゃべん)会」で勉強に励んだ。79年に富山医薬大附属病院が開院すると同時に、全国の国立大学で初となる和漢診療室が発足。「まだ学生だったけど、ずうずうしくも出入りさせてもらっていました。せっかく富山で特色ある取り組みをやっているのだから、それを生かした診療をやりたかった」
以来、日進月歩の現代医学の中で、漢方がどんな役割を果たすべきかを追い求めてきた。
その一つは、中国に古くから伝わる「未病(みびょう)治(ち)す」の考え方だと心得る。今で言う「予防医学」である。研究活動では、動脈硬化の進展予防に「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」という漢方薬が効果的なことを明らかにした。
●オーダーメード医療
富大附属病院の和漢調剤室には220種もの生薬がずらりと並ぶ。「大学病院でも、これだけそろっているところはないでしょう」
これらの生薬を患者の病状や体質、持病、余病に応じ、最適なさじ加減で調合して処方する。現代医学で言えば、一人一人の患者に合わせた「オーダーメード医療」である。その姿勢が身に染み込んでいる。
「医療の活動及び環境整備担当」の副病院長に昨年度就任した。患者サービスの充実や地域の医療機関との連携強化などを担う。
「大学病院は高度な先端医療を提供するのが使命ですが、一方で、地域に根ざし、地域から信頼されなければならない。両翼が欠かせないんです」
個々人の状態にきめ細かく応じた治療を旨とする漢方の心は、地域の患者の声にきめ細かく応える病院づくりに通じる。
より一層頼りがいのある病院に進化するために、漢方の道を歩んできた医療人だからこそ、できることがある。