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富大病院最前線

進む高齢化、役割高まる

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第11回

進む高齢化、役割高まる

眼科診療科長

林 篤志

急速に高齢化が進む中、老化や長年の生活習慣病により、目の病に悩む患者が増えている。特に増加が著しいのは、目の水晶体が濁る「白内障」や視神経に障害を起こす「緑内障」、視野の中心がゆがむ「加齢黄斑変性」などだ。今後さらに高齢化の進展が見込まれることから「眼科医療の必要性は一層高まる」と気を引き締める。
人間は視覚から外界の情報の8〜9割を得ている。それを失えば、日常生活の不自由さにとどまらず、精神的、肉体的な影響は計り知れない。「息を引き取るその瞬間まで、視力を維持することが眼科医の使命」と肝に銘じる。

 

●県内「最後の砦」

富大の眼科学講座教授に就任して7年。県内唯一の大学病院の眼科として「最後の砦(とりで)」の役割を実感している。ほかの医療機関では治療できない病気でも、「富大なら」とかすかな希望を胸に受診する患者も少なくない。その思いに応えようと、ほとんど全ての目の病気に対応できる治療体制づくりに心を砕く。
例えば、網膜静脈閉塞(へいそく)症の原因を治療できるのは、国内で横浜市立大と富大だけだ。眼科専用の手術室を備え、視細胞を生体眼のまま観察できる機器や、網膜の血管の酸素飽和度を測る機器など、全国有数の診断装置がそろう。 地域で活躍する眼科医の育成にも力を入れる。自ら若手医師や学生の指導に当たるほか、東京や大阪などの都市圏の病院に派遣し、最先端の技術を学ぶ機会を積極的に設けている。「最善の治療はこれでいいのか。常に患者の立場で考えられるよう、しっかり話を聞く姿勢を身に着けてほしい」。自身の医師としての信条を、後進にも伝えている。
県眼科医会と連携して勉強会や講演会を企画し、県内の眼科医が最新治療を取り入れる機会を増やした。「目の診療は眼科専門医にしかできない。県全体の診療レベルを高めていきたい」。富山の眼科医療を支える強い決意がのぞいた。

はやし・あつし 大阪市出身。大阪大医学部卒。2度の米国留学などを経て、2007年から富大眼科学講座教授。日本眼科学会指導医。
林 篤志