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富大病院最前線

電子化牽引、医療支える

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第6回

電子化牽引、医療支える

病院長補佐・経営企画情報部教授

中川 肇

医師が患者と向き合う時、必ず傍らにあるのが診療記録を記す「カルテ」だ。富大附属病院では2004年に電子化され、パソコン画面を開けば、患者の治療・投薬の状況や検査画像などを確認できる。
電子カルテのメリットは膨大な紙資料を減らすことだけではない。医師はもちろん、看護師や事務職員も情報を共有でき、迅速な対応が可能になった。
耳鼻咽喉科の医師として診療に当たりながら、めまいの研究でコンピューター解析に取り組んだ経験を買われ、電子カルテの導入や紙文書の電子化などの事業を牽引してきた。

 

●臨床的センス大切に

「取り組んでいることが医療の質の向上につながっているか。常に臨床的なセンスを大切にしたい」。病院のシステムを検討する際、医師の視点を忘れないよう肝に銘じている。
電子カルテを導入した当初は「入力が煩わしい」など、不満の声も多かった。医師らの意見をもとに改善を重ね、今では「なくては困るインフラのような存在になった」と胸を張る。
24時間365日ノンストップの医療現場で、一度もトラブルで診療に影響を与えたことがないのが誇りだ。深夜の数時間を縫って行われる部品交換や機器の調整には、責任者として徹夜で立ち会う。
現在は、来年1月から稼働する第3期の電子カルテ導入に向け準備を進めている。次期システムでは、患者の検査や治療の経過が一目で分かる「クリニカルパス機能」を整備。医師と看護師が携帯端末を持ち、患者のベッドサイドで処置の経過を入力したり、カルテを参照したりできるようになる。他の医療機関との連携も強化する方針だ。
10月からは新システムに向け、医療スタッフや職員の研修が始まる。「大きな変化ですが、スムーズな移行が大切。患者さんに気付かれないくらいが、理想ですね」。富大附属病院の医療を支える「縁の下の力持ち」としての気概がにじんだ。

なかがわ・はじめ 富山市出身。浜松医大卒。日本医療情報学会理事などを務める。
中川 肇