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富大病院最前線

最新の技能で心臓を守る

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第22回

最新の技能で心臓を守る

循環器内科診療副科長

平井 忠和

富大附属病院は14日、北陸で初めて、カテーテルを使って心臓に人工弁を取りつける手術を実施した。大動脈弁狭窄(きょうさく)症の画期的な治療法である。
大動脈弁狭窄症は心臓の弁が狭くなり、血液の流れが妨げられる。息切れや動悸(どうき)が徐々に進行し、胸痛などの症状が出始めると急激に悪化、失神や突然死の恐れもある。

 

●北陸初TAVI実施

「高齢者に多い病気ですが、従来の人工心肺を使った開胸手術はお年寄りには身体的負担が大きく、手術を受けられない方がいた。しかし、手術できない方でも、カテーテルで治療できるようになったんです」。循環器内科の専門医として意義を強調する。
この治療は「経カテーテル的大動脈弁置換術」、通称「TAVI(タビ)」と呼ばれる。直径約7ミリのカテーテルの先端に人工弁を取りつけ、太ももの付け根から大動脈に入れて心臓まで到達させ、狭まった大動脈弁と人工弁を置き換える。2013年に国内で保険適用となった。
上野博志助教が担当し、富山市内の男性(85)に実施。約2時間で終了した。「患者さんは翌日に立ち上がり、その次の日に病棟で歩いていた。胸が楽になったと喜んでいました」。胸を切り開く手術では痛みが残り、これほど早く歩けるようにならない。
「お年寄りの場合、長期間ベッドで過ごすことによる筋力低下を防ぐことが大事。その点からも、この治療は高齢者に適している」。老年病の専門医でもあり、高齢化社会に対応した医療に心を砕く。
「高齢になるほど、かかっている病気や、職歴などの生活史、人生観がさまざまで、それぞれの患者に合った治療が求められます」。適切な治療を提供するために「日々勉強し、新しいことに挑戦したい」と力を込める。
TAVIには循環器内科だけでなく、心臓血管外科、麻酔科の医師、技師や看護師らのチームワークが求められる。「確かな知識と技術に裏付けられた思いやりのある医療。それが大学病院の使命です」。チーム共通の思いだ。

ひらい・ただかず 富山医薬大医学部卒。米国ペンシルベニア州立大、カンザス州立大留学を経て、1996年富山医薬大第2内科助手、2012年富大附属病院第2内科講師、14年同病院診療教授。
平井 忠和