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富大病院最前線

最終診断担う「医師の医師」

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第26回

最終診断担う「医師の医師」

病理部長

井村 穣二

富大附属病院の病理部に足を運ぶと、医師たちが懸命に顕微鏡をのぞいていた。病理医というと、なじみが薄いかもしれないが、質の高い医療を提供する上で欠かせない存在。顕微鏡が武器である。
患者の体から採取した細胞や組織を顕微鏡で調べるのが大きな任務だ。その細胞は、がんなのか、良性の腫瘍なのか。がんであれば、どのくらい進行し、広がっているのか。そうしたことを最終診断するのが病理医である。
「病理医はドクター・オブ・ドクターと呼ばれているんです」。つまり「医師のための医師」。病理医の診断が臨床医の治療方針を左右する。的確な病理診断が最終的に「患者のため」となる。守備範囲は全ての臓器。責任重大である。
年々、増えているのが「術中迅速病理診断」だ。
手術でがんを切除する場合、顕微鏡でないと見えないくらいの微少なレベルでも、がんの取り残しがあると、転移につながる恐れがある。かといって、取り残しをなくそうと、周囲の健康な細胞まで切除するわけにはいかない。
そこで、手術中に患部を瞬間的に凍らせ、薄く切って染色し、顕微鏡を使って、がんの範囲を見極める。所要時間は20分前後。これにより、最小限の切除で、がんの取り残しを防げるのである。
富大附属病院は県内で初めて「遠隔病理診断」にも取り組んでいる。新潟県上越市の上越総合病院でがん手術を行う際、患部の細胞の顕微鏡画像をインターネットで富大附属病院に飛ばし、病理診断を行う。

 

●増やすことが使命

国内では病理医不足が深刻だ。全国の一般病院約7500施設に対し、病理専門医は2259人。富山県は26人で人口比では上位だが、それでも十分ではない。日本では病理学は基礎医学のイメージが強く、社会的な認知度が低いことが背景にある。 「病理医がいかに臨床や患者に貢献しているか、もっと宣伝する必要がある。私に課せられた使命は新しい病理医を1人でも増やすことです」と力を込めた。

いむら・じょうじ 札幌市出身。杏林大卒、同大学院修了。栃木県立がんセンター、獨協医大などを経て2012年から、富大大学院病理診断学講座教授、富大附属病院病理部長
井村 穣二