富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第16回

子どもの総合医であれ

小児総合内科診療科長

足立 雄一

「子どものためなら、どれだけでもしてあげたい。小児科の医師はみんな、そうした気持ちを持っていると思います」 小児科医としての心構えを尋ねると、こんな言葉が返ってきた。
富大附属病院の小児科を束ねるリーダーである。小児総合内科、小児循環器内科、小児発達神経科、周産母子センターの4部門があり、幅広い分野で関連機関と連携しながら、子どもたちの未来を守る重責を担っている。
循環器グループは先天性心疾患の治療で北陸の中心的役割を果たし、米国で心臓移植を受けた長尾澄花(すみか)ちゃん(2)=射水市=の治療も担当した。県内で唯一の小児がんの治療を担う病院であり、新生児医療、てんかん・発達障害、アレルギー、小児救急など各分野で重症事例や難治性疾患の治療に当たっている。
それぞれの領域で高度な知識と技術が求められるが、専門性の高さと同時に重んじることがある。
「小児科医の基本は、まず子どもを全般的に診られること。子どもの総合医になった上で、専門性を積み上げてほしい」 医療の細分化による弊害も指摘される中、「子どもを一人の人間として診る」ことの大切さを強調するのである。
言葉による表現力が未熟な子どもの場合、顔色や顔つき、泣き声の大きさなど「微妙なサイン」から的確に異変を察知することが不可欠である。その力量を身につけるには「健診などを通し、元気な状態の子どもをいかに多く診るか」が大事だという。地道な努力を積み重ねることで、子どもの総合医としての目が養われていくのだろう。

 

●専門はアレルギー

自身の専門は、ぜんそくとアレルギーである。その道を志したのは「100%子どもらしい生活ができるようにしてあげたい」との思いからである。
病棟のクリスマス会では自らサンタクロースの格好でプレゼントを配り、入院している子どもたちを喜ばせる。柔和な表情の中に、子どもを守る強固な意志が感じ取れた。

あだち・ゆういち 東京生まれ、富山市育ち。富山医薬大卒。2013年9月から富大医学部小児科教授。日本アレルギー学会指導医。
足立 雄一