ホーム

特集

アーカイブ

富大病院最前線

薬都の最前線、一丸で支える

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第7回

薬都の最前線、一丸で支える

副病院長(薬事担当)・薬剤部長

足立 伊佐雄

2300種類もの医薬品の管理を一手に引き受ける薬剤部のトップである。
「薬都の名に恥ずかしくない活動をしたい」
薬をつかさどる責任は重い。患者にとって適切な量の薬が用いられているか。薬の副作用や薬同士の相互作用による悪影響は出ていないか。34人の薬剤師が「医薬品の適正使用」という使命を果たすため、日々、心を砕いている。
医薬品の適正使用を推進するには「EBM(科学的根拠に基づいた医療)」の考え方が大前提となる。ただ、医療現場では、単にEBMだけでやっていくと、うまくいかないケースも生じるという。
「医学的根拠に加え、患者さんの気持ちを知って、それぞれの実情に応じた薬物治療をする必要があるんです」
例えば、ものを飲み込む力が衰えた高齢者の場合、薬のタブレットが大きすぎて、服用を嫌がることがある。
「患者さんの中には、薬の服用で悩みを抱えていても、自分から言い出せない人もいます。だから、薬剤師は患者さんとしっかり話をしなければならない」

 

●対話する能力育成

大学病院のもう一つの使命である人材育成の面でも、薬剤師を志す学生を病棟に連れていき、患者と実際に話をしてもらう取り組みを進めている。
「対話する能力の育成は、従来の薬学教育では不足している面もあった。これからの薬剤師にとって、コミュニケーション力は重要な要素です」
薬剤師と患者の対話を重視する姿勢は、病院の大きな特徴である和漢薬の分野にも及ぶ。「和漢薬なんでも相談室」と銘打ち、漢方に関するさまざまな質問を受け付けている。
地方都市の薬剤師不足など課題も多い時代、現場の医療スタッフ同士も対話を重ね、一丸となって医療の向上に取り組むことが欠かせない。
「医師、看護師、薬剤師が一体となった未来型のチーム医療を目指したい」。薬都の現場の最前線を支える強い決意が見えた。

あだち・いさお 東京都江東区出身。東大大学院修了。富大附属病院教授。
足立 伊佐雄