ホーム

特集

アーカイブ

富大病院最前線

日常の延長で良質な病院を

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第14回

日常の延長で良質な病院を

病院長

塚田 一博

病院長に就任した2013年、手術部から1年間の手術時間が最も長かった医師として表彰を受けた。費やした時間は約652時間。専門とする肝臓や膵臓(すいぞう)など消化器系のがんを中心に、最前線の現場で闘ってきた証しである。
翌年以降は、若手医師に手術を任せる機会も増えた。「一本立ちできる医師が多くなり、分野によっては自分を超える人材もでてきた。安心して病院長の仕事に打ち込めている」と後進の成長を頼もしく思っている。    

 

●医療人の供給源に

病院長1期目、各診療科に教育医を配置したのも、大学病院の使命である人材育成に確実なレールを敷くためだ。「医師、看護師、薬剤師も含め、良い医療人の供給源になりたい」との思いは強い。
先月の病院長選で再任され4月から2期目に入る。人材育成との両輪は、県民に最先端の医療を提供することにほかならない。新年度、新しい治療法と診断法の確立へ臨床研究の環境を整える。新治療の実用化に向け、サポート体制を強化する考えだ。

 

●よく声をかける

●常に患者の目線で 次世代を背負う医学生たちには、こう語りかける。「教科書は一般論だが、患者は生身の人間。一人一人が異なる背景を持っている。常に患者の目線でものごとを考えなさい」 さまざまな患者に接してきた。 精巣がんで、普通なら子どもをあきらめざるを得ない状況の男性がいた。だが、精子を凍結保存し、体外受精で元気な赤ちゃんが生まれた。腎臓がんが心臓近くまで達し、生きる希望を失った女性がいた。心臓外科と連携し、10時間以上に及ぶ手術の末、一命を取り留めた。「やったかいがあった」。患者の喜びが原動力になる。 今、経営担当の副病院長を任されている。心がけるのはバランス感覚と先を見通す目である。「例えば、手術ロボットのような先端医療の導入は、目先だけを考えれば、必ずしも採算性がよいわけではないが、その成果は最終的に患者のプラスになる」。刻一刻と変わる時代の中で、富大附属病院が果たすべき使命を常に考えている。

つかだ・かずひろ 栃木県栃木市出身。新潟大医学部卒。富大医学部第2外科教授。第67回日本消化器外科学会総会会長。2013年4月から富大附属病院長。
塚田 一博