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富大病院最前線

めまい治療のトップを走る

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第18回

めまい治療のトップを走る

耳鼻咽喉科診療科長

將積 日出夫

高齢化やストレス社会が進展するにつれ、めまいに悩む人が増えている。富大の耳鼻科は旧医薬大初代教授の水越鉄理(かねまさ)氏、2代目の渡辺行雄氏と代々、めまいの診断・治療に力を入れてきた。その伝統を受け継ぎ、2012年、3代目教授に就任した。
めまい治療で「国内トップ」を走る医療機関である。取り組みの一つとして、激しいめまいや難聴などに悩まされるメニエール病の治療に新たな道を切り開いたことが挙げられる。
従来は薬が効かなければ手術しかなかったが、薬物治療と手術の間に位置するものとして「中耳加圧療法」を2000年に国内で初めて導入した。当初用いていた海外製の治療機械では鼓膜に穴を開ける必要があったが、穴を開けなくていい国産の機械を活用し始め、さらに高性能の機械を開発してきた。  

 

●「低侵襲」心がけ

「患者さんにとって、体への負担が少ない『低侵襲』な治療法や検査法を常に心がけてきました。患者さんに喜んでもらいたい一心です」
高度なめまい治療のほか、耳が聞こえない人に対する人工内耳手術を県内で唯一行っている病院であり、頭頸部(とうけいぶ)がんの手術など守備範囲は幅広い。いずれの分野でも「低侵襲」をモットーに掲げ、よりよい治療を追求している。 旧医薬大の1期生で、昔から「研究が好きだった」。大学生のころ、朝日町で飲み継がれる「バタバタ茶」に関する研究に取り組んだ。飲んでいる人と飲んでいない人で、中性脂肪などにどれだけ差があるかを調べたのである。
耳鼻咽喉科の門をたたいたのも、めまいの研究に打ち込む水越氏の熱心な姿勢にひかれてのことだった。
「臨床の現場で感じた『こうすれば、もっと患者のためになるんじゃないか』という疑問を一つ一つ解決していくことで、医療を向上させていくというのが私のスタンスです。その姿勢を若い先生たちと一緒に貫いていきたい」 その言葉に、医学の発展に注ぐ飽くなき探求心が表れていた。

しょうじゃく・ひでお 愛知県岡崎市生まれ。富山医薬大卒。2012年9月から富山大学大学院医学薬学研究部耳鼻咽喉科頭頸部外科教授。1998年、めまいの国際学会「バラニー学会」の若手奨励賞を日本人で初めて受賞。
將積 日出夫