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富大病院最前線

不妊症治療悩む男女支援

富大病院最前線 富山新聞にて隔週火曜日連載中

各診療科や各部署の取り組みをご紹介します。

第23回

不妊症治療悩む男女支援

泌尿器科副科長

小宮 顕

夫婦やカップルの7組に1組が不妊症に悩んでいるとされる。その原因は女性側にあると思われがちだが、実際のところ、半分近くは男性側にある。男性不妊症外来の県内唯一の専門医は「不妊症は男女が一緒に向き合うべき問題。男性も気軽に相談してもらいたい」と強調する。 男性向けの不妊症外来は週1回と少ないものの、年間700人が訪れる。その数は3、4年前と比べ倍増した。だが、自主的に診察に訪れる男性はごく一部という。「年齢が上がれば、精子の数は少なくなり、活動率も低下する。若いうちから治療すれば、妊娠の確率は高まる」と指摘する。 外来を訪れた人には、精液の生化学的分析などによる診断・治療を行い、生活習慣の改善についても助言する。最近は、県主催のキャンペーンに参加し、不妊症の周知に一役買う。今年度から男性の不妊症治療に県の助成が受けられるようになる中、悩んでいる男女を少しでも支援したいとの思いをにじませる。 泌尿器科の特徴的な医療として、前立腺がんに対する放射線療法「高線量率組織内照射」を行っている。前立腺に直接針を刺し、内部から照射する方法だ。照射は4日間で、入院期間も約2週間と短い。性機能障害などの合併症も少ない。この治療を行っている県内の医療機関は富大附属病院だけで、2007年7月の開始以来、約100人に治療してきた。「高齢の患者が多いので、できる限り体に負担が掛からない治療を勧めていきたい」と語る。 医師は、患者の病気を治し、無事に家に帰すことが使命だが、時にはそれがかなわないこともある。研修医の頃、先輩の医師から「たとえ患者が亡くなったとしても、家族から感謝されるような医師になれ」との指導を受けた。以来、そうした治療に全力を尽くしている。

 

●患者と家族のために

副科長という役職だが、科長は塚田一博病院長が兼務しており、現場の実質的な責任者だ。「全ては患者と家族のために」。二十数年前の初心は、これからも変わることはない。

こみや・あきら 埼玉県生まれ。千葉大医学部卒、千葉大大学院医学研究科修了。千葉県がんセンター泌尿器科医長、富大大学院医学薬学研究部腎泌尿器科学准教授などを経て2007年から富大附属病院泌 尿器科副科長。診療教授。
小宮 顕