地元食材で患者を元気に
栄養部副部長・栄養管理室長
矢後 恵子富大附属病院が提供するのは高度な医療だけではない。毎日3回、入院患者向けに約500食の病院食が用意され、治療や術前術後の栄養管理をサポートしている。食の面から病院を支える現場の責任者は「食べることは生きること。おいしくて、安全安全な食事を提供するよう、スタッフ一同、誠心誠意の仕事を心掛けている」と説明する。
●喜びと自信に直結
患者の中には食欲が低下する人もいる。だが、そうした人にもできる限り口から栄養を取ってもらうことの大切さを指摘する。食べることは、生きる喜びや自信に直結するからである。そのためにも、食べやすく、栄養満点で見た目も良いメニューを用意することに心を砕く。
そうした姿勢は、食材選びにも表れる。昨年9月から、病院近くで収穫された野菜のほか、近畿大水産研究所富山実験場(射水市)で養殖されたサクラマスやマアナゴを使う。間もなく丸1年を迎える試みに手応えを示し、「新鮮な食材は口当たりも食感も違う。地元の新鮮な素材を生かして、病院食をさらに改善していきたい」と語る。
栄養管理室が中心となり、2004年4月から「栄養サポートチーム」の活動を続ける。各科の医師に加え、看護師や薬剤師、臨床検査技師、管理栄養士がチームを組んで週1回の回診を行っており、現在までに500回を超えた。診療科の壁を越えた取り組みを重ね、今後も患者の回復を早めていく考えである。
先日、退院した70代の女性から、1通の手紙が届いた。病院食について感謝の言葉がつづってあったが、その締めくくりにこう記されていた。「仮にまた入院することがあれば、絶品のカレーうどんと厚焼き卵が食べたい」
退院した患者には、健康に過ごしてほしいと心から願っている。しかし、もう一度入院した場合も、最高の食事を提供してあげたい。病院食を通じて元気づけた患者から励ましを受けるたびに、仕事の喜びと責任の重さをかみしめている。