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がんゲノム医療の保険診療を開始します

がんゲノム医療の保険診療を開始します

【お知らせ】
2019年11月1日から、がんゲノム医療を保険診療として受け付けます。
従来の自由診療によるオンコプライムとGUARDANT360は引き続き検査可能です。

がんゲノム医療を希望される患者さんへ

 富山大学附属病院、がんゲノム医療推進センターではがんゲノム医療を希望される患者さんを対象として「遺伝子パネル検査」を行なっています。本検査を希望される方はこのページをお読みになり、内容をご理解いただいた上で、現在かかっている病院・診療科の主治医にご相談下さい。当該施設よりがんゲノム医療推進センターへの予約受付を行います。また検査申し込みの最終決定は、がんゲノム医療推進センターを受診し、担当医とよく相談の結果、決定されます。

第1章 がんゲノム医療について

1.1 ゲノム医療とは

ゲノム医療とは、個人の「ゲノム情報」をもとにして、その人の体質や病状に適した「精密な医療」を行うことを言います。具体的には、これまでの採血や画像検査などの一般的な検査に加えて、品質と信頼性の担保されたゲノム検査を用いて診断を行い、最も有効な治療・予防及び発症予測を患者さんに提供することを指します。現在の医療では、様々な臨床検査の結果によって診断を行い、診断された疾患の治療ガイドラインに沿って治療を行います。同じ疾患を患っている患者さん全員に同じ治療・投薬を行うということです。しかし、同じ治療・投薬を行なっていても、ある人は効果があったり、ある人は効果がなかったり、またある人は合併症を起こしてしまったり、重篤な副作用によって場合によっては死亡してしまうなど、個人によって効果や副作用は様々です。
がんゲノム医療では、個々人のがんのゲノム解析を行い、最適な治療法や薬剤の選択を行うことで、治療の効果を最大限に引き出し、副作用を最小にとどめるなど、個人の病態を考えた最適な医療を提供できると期待されています。

1.2 ゲノムの基礎知識

・遺伝子とは
人間の身体は、「細胞」という基本単位からなっており、遺伝子とは、細胞の基本構造をなすタンパク質を合成するための、設計図のようなもので、親から子へと受け継がれます(遺伝)。細胞の中心に「核」と呼ばれる部分があり、この中の「DNA」が「遺伝子」として働いています。個々の細胞は、この遺伝子の指令に基づいて合成されたタンパク質によって役割を果たし、人間の体は健康に維持されています。
・ゲノムとは
遺伝子は非常に長いDNA鎖でできています。ゲノムとは遺伝子を含むDNA鎖全体を指し、全ての遺伝情報が含まれます。
・がんの成り立ち
細胞が分裂する時に遺伝子を複製(コピー)するため、同じゲノム情報が全ての細胞に存在します。この遺伝子を複製する時や、発がん物質の暴露などによって間違い(変異、エラー)が起きてしまい、この変異ががんの原因になり、変異が蓄積することによってがんが惹起されます。この変異は、がんの原因になりますが、次の世代には引き継がれません。

1.3 がんに関する基礎知識

・分子標的薬
がん細胞は、様々なタンパク質の異常により増殖することがわかってきました。この異常は遺伝子の変異によって引き起こされるものです。分子標的薬は、特定の分子を狙い撃ちし、がん細胞の増殖を防いだり、破壊したりする薬です。従来の抗がん剤が、がん細胞だけではなく正常細胞も破壊してしまうのに対し、分子標的薬はがん細胞の増殖に関わる特定の分子に狙いを定めて攻撃したり増殖を抑えたりします。
・希少がん
希少がんとは、年間発生件数が人口10万人あたり6人未満のがんを指します。確定診断が難しく、治療薬の開発が進まないため、治療満足度が低く、重篤度と緊急性が高い疾患領域です。国立がん研究センター希少がんセンターのホームページに、様々な希少がんの解説が掲載されています。
(「国立研究開発法人国立がん研究センター希少がんセンター」https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/index.html
・原発不明がん
十分な検査を行ってもがんが最初に発生した臓器がはっきりせず、転移巣だけが大きくなったがんのことで、頻度はがん全体の約1~5%とされています。がん細胞がどこの臓器に由来するか特定することが困難なので、手術で完全に取り除くことができず、根治させることが容易でない病態であると考えられます。

第2章 遺伝子検査について

2.0 どんな人が対象になるのか

適応患者:

  1. 原発不明癌や希少がんといた稀ながんで、標準治療が確立していないがん患者。
  2. 固形がんで標準治療が終了したないし終了が見込まれる患者。
  3. 全身状態や臓器機能が保たれ、本検査施行後に化学療法の適応となる可能性の高い患者。

1あるいは2の患者で3を満たす方。適応の判断は主治医が行います。

2.1 遺伝子パネル検査について

がんは遺伝子の変異によって引き起こされる病気ですが、同じ臓器に発生しても、がん細胞に生じている遺伝子の変化は患者さんごとに異なります。すでに日常で行われている遺伝子検査は特定の遺伝子で起こっている一部の変異しか調べることができませんが、遺伝子パネル検査は、患者さんのがん組織や血液を用いて数十~数百の遺伝子変異について網羅的に解析を行います。そこで得られた遺伝子の変化の情報を利用し、がんの診断や治療法の選択に役立てることができます。
また、原発不明がんや希少がんの場合、治療法の選択に迷うことがありますが、本検査によってがんの原因になっている遺伝子の変化が推定されれば、その変異に基づいた治療(分子標的薬)が可能となる場合があります。標準治療に不応となった場合でも、がん細胞で起こっている遺伝子変化に対して効果が期待される治療薬の情報(臨床研究を含む)が得られる可能性があります。一方、本検査を利用しても患者さんのがんの診断や治療に有効な情報が得られない可能性もあります。

2.2 遺伝子パネル検査でわかること

遺伝子パネル検査を行うことで、患者さんのがん組織中に認められた遺伝子の変化が判明し、その変化に対して効果が期待できる治療薬や臨床試験の情報を得ることができます。得られた薬剤や臨床試験の情報の中には、国内では承認されていない薬剤や実施されていない臨床試験も含まれます。
本検査はがん関連遺伝子(体細胞遺伝子)の異常を見つける検査ですが、数%で遺伝性腫瘍に関する遺伝子変異が見つかる可能性があるため、検査を受ける前に、その可能性について十分説明を受けておく必要があります。遺伝性腫瘍に関する遺伝子変異の情報の取り扱いには倫理的な細心の注意を払う必要があります。

2.3 検査で使用する検体について

本検査で使用する検体は、手術または生検時に採取された病理組織や、患者さん本人の血液を用います。保存された検体を使用する場合、検査に使用する検体の保管基準に沿ったものを使用します。
検査に使用する検体は、以下の基準を満たすFFPE標本検体です。検体の種類によって異なりますが、1回の検査に10μメートルの厚さで薄切された未染色のFFPE票本を10枚程度要します。
検体は腫瘍がなるべく多く含まれている部位を選択する必要があります。
(腫瘍含有量として20%以上、できれば50%以上)
FFPE(Formalin Fixed Paraffin Embedded)標本
手術や生検で採取した組織をホルマリン液で固定し、パラフィンというろうそくを溶かしたようなものでブロック状にし、それを薄くスライスしてスライドガラスに貼り付けたものです。手術、生検検査を行った医療機関で用意してもらいます。

検査の流れ

遺伝子パネル検査の流れ

第3章 受診手続について

3.1 他の医療機関から

現在かかっている医療機関の主治医の先生に相談をして下さい。がんゲノム医療の適応と判断された場合、申し込み用紙に必要事項を記入し、主治医に紹介状の記入を依頼してください。その後、当該医療機関から「がんゲノム医療推進センター」に連絡してもらってください。後日、当センターより予約日時の案内を行いますので、当該医療機関より連絡をもらい、指定の日に受診をしてください。

申し込み用紙(PDF)
Tel 076-434-7725
Fax 076-415-8862

3.2 富山大学附属病院から

富山大学附属病院に通院中の方はかかっている診療科の主治医にご相談ください。

第4章 費用について

「がんゲノム医療」は保険診療または自由診療で行われます。自由診療の検査費用は全額自己負担となります。遺伝子パネル検査の結果により、治療薬が示唆された場合でも、保険適応外の薬剤の場合、治療費も全額自己負担となる可能性があることを予めご了承ください。
金額については別項をご参照下さい。

富山大学附属病院で受診可能な遺伝子パネル検査

富山大学附属病院で受診可能な遺伝子パネル検査(PDF)

遺伝子パネル検査における注意事項

本検査はいまだ発展途上にあるため、従来の診療に比較して不確実な部分や、意に沿わない結果が得られる場合があります。以下に注意点として挙げますので、検査受診前に慎重に検討をして下さい。

1.がん遺伝子パネル検査の不確実性

がん遺伝子パネル検査は急速に発展した先進技術ですが、その反面、不確実性をはらんでいます。検査を行っても治療選択に役立つ情報が得られない可能性や、候補となる薬剤が見つかったとしても、それが適応外、未承認といった場合には使用できない場合があります。また、解析に用いた検体の品質によっては解析自体が不成功に終わってしまう可能性もあります。

2.遺伝学的検査・診断を実施する際に考慮すべき遺伝情報の特性

遺伝子には細胞の設計図のような役割があることから、DNAシークエンスによって人の個性がわかる場合があります。特にある特定の疾患が遺伝子配列によって規定される病気(遺伝病)が発見される場合があり、その場合は将来の病気の発症や、血縁関係のある家族の方への影響も考慮されます。ただし、がん細胞の遺伝子変異は一般には親から子に受け継がれたものではなく、生活の中で徐々に変異が起こっているもの(後天性)です。したがって、多くの場合、遺伝病の心配が生じることはありません。ただ、ある種のがんでは先天的な遺伝子の配列から発症しやすいもの(遺伝性腫瘍)があり、その場合には別の配慮が必要になります。このような遺伝性変異が見つかった場合、あなたは、結果開示を希望する権利と、結果開示を拒否する権利があり、その意思を「検査同意書」で確認いたします。遺伝性変異が見つかった場合、その結果を知ることで、今後発症するかもしれない病気の早期発見・早期治療に役に立つ可能性があります。一方、知ってしまったことで、あなたやあなたの家族が不安や精神的負担を感じる可能性もあります。

3.費用負担

本検査は保険診療または自由診療で行われます。本検査の結果によって治療を行う場合は、あなたが現在治療を受けている病院の担当の先生と相談の上実施することになります。この検査で見つかる薬剤の中には、国内で承認されていない薬剤(未承認薬)や、国内で承認済みでも、あなたのがんに対しては保健適応されていない薬剤が含まれます。また、これらの薬剤を使用して治療を行う場合、保険診療の対象外となるため、高額な治療費の負担が必要となる場合があります
検査レポートが作成できない場合があります。この検査では提出していただいた検体(がん組織)の状態(古い検体や組織破壊が進んでいる検体など)によっては、最終的なレポート作成ができない場合があります。

4.代理人への結果の説明について

諸事情により、あなたへの説明が困難となった場合などは、事前にあなたに指定していただいた代わりの方(代理人)に結果を説明させていただくことがあります。そのため、あなたの結果を伝えてほしい代理人の方の名前と連絡先についても同意書に記載していただくことになりますのでご理解ください。

遺伝子パネル検査の料金

保険診療

OncoGuide™(オンコガイド)
FoundationOne® CDx(ファウンデーションワン)
検査に対する保険点数は5万6千点(56万円)で、
そのうち1-3割の自己負担がかかります。

自由診療

がんゲノム医療相談料 1時間につき 8,800円
OncoPrime(オンコプライム) OncoPrime がん遺伝子検査 959,200円
検体組織の状態に起因する検査中止の場合
(検体の状態等により正常な遺伝子検査ができなかった場合をいう。)
356,400円
Guardant360(ガーダント) Guardant Liquid Biopsy がん遺伝子検査 初回 404,800円
2回目以降 299,200円