臨床腫瘍部では、以下の観察研究・カルテ調査も行っています。

臨床試験と同様、いずれも本学の倫理委員会の承認を受けた研究であり、今後より質の高い臨床研究を行うための基礎資料となる重要な研究です。

この研究で対象となる方に直接治療などを行うことはありません。過去の血液・尿資料・検査結果や簡単なアンケートを用いた研究であり、 本研究に参加することによる患者さんの利益・不利益はともにありません。 また、個人情報保護のため、収集したデータには匿名化処理を行い研究に用います。参加を希望されない場合は臨床腫瘍部までご連絡下さい。

「がん患者におけるシスプラチン投与後のカルニチン動態と倦怠感の関連性に関する研究」

がん関連倦怠感は、“がんやがん治療に関係した、身体的(physical)、精神的(emotional)、認知的(cognitive)な持続する疲労感という主観的な感覚”と定義され、抗がん剤治療を受ける癌患者の約70%に、 あるいは進行がん、終末期では、多くの患者が訴える症状のひとつで、患者に多大な苦痛をもたらし、活動度、QOLも著しく低下させます。

がん関連倦怠感の発症機序は明確となっていませんが、抗がん剤治療、放射線治療、がん性悪液質、疼痛、貧血、脱水、精神疲労、睡眠障害、栄養障害などが関連因子として考えられています。 また、近年の研究では、骨格筋量、骨格筋の強さの低下もがん関連倦怠感と関係する可能性が報告されています。一方、カルニチンは、分子量161のアミノ酸の1種であり、食事からの摂取、 あるいは生体内で生合成され、その約98%が骨格筋内に保存されることが知られている物質で、その主たる作用は、長鎖脂肪酸のミトコンドリア内膜への輸送であり、エネルギー産生(ATP)に重要な役割を果たしています。

しかし、一部のがん患者あるいは、悪液質を発症したがん患者においては、血漿中のカルニチン濃度の低下が報告されており、さらには、プラチナ系抗がん剤の投与では、カルニチンの尿中排泄が高まることも知られています。

また、担がん動物においては、逆にカルニチンの投与が、摂餌量の回復、体重減少の抑制、筋肉量減少の抑制を伴い、活動量を回復させることが報告されているため、カルニチンの倦怠感・疲労に対する効果が推測されています。

実際、少数例ではありますが、カルニチン欠乏を呈したがん患者の倦怠感にカルニチン投与が有効であったとの報告もあります。そこで、シスプラチン投与予定のがん患者の血清中のカルニチン濃度(遊離カルニチン、総カルニチン、 アシルカルニチン)と、尿中排泄量(0-24時間)について測定すると共に、倦怠感をFACIT-Fという指標(質問紙)を用いてその変化を調査することにしました。

この観察研究への参加に同意して頂いた方には、FACIT-F質問紙の記入(抗がん剤投与の前とその1週間後)、筋肉量の測定(上腕の周囲長を巻尺で測ったりします)にご協力いただくと共に、 抗がん剤の副作用を早期発見するために行われている採血と採尿の検体を一部用いたカルニチンの測定などを行わせていただきます。

「在宅緩和ケアにおける地域連携クリニカルパスおよび緩和ケアチームの有用性の検証」

この研究の目的は、

1)富山県高岡医療圏で開発された「在宅緩和ケア地域連携クリニカルパス」というツールを利用したり、病院の緩和ケアチームが訪問看護師や開業医などの地域医療者と一緒に患者さんのご自宅を 訪問すること(地域緩和ケアチームの活動)がどのような理由で患者さんにとって有用となるかを質問紙調査により明らかにすること(プロセス研究)と、

2)これら2つの活動が病院から在宅緩和ケアへ移行し、在宅で看取られる患者さんの割合にどの程度の影響を与えるかを多変量解析という統計学的な手法を用いて明らかにすること(アウトカム研究および因子研究)です。

この研究にご協力いただける方とそのご家族の皆様には、後日、在宅緩和ケアを受けてどう思われたか等のアンケートやインタビューをお願いする事があります(全員ではありません)。

このアンケートやインタビューは強制ではないので、もし都合が悪ければお断り頂いても構いませんし、その場合でも一切不利益を被ることはありません。

「癌化学療法時の悪心嘔吐観察研究」