臨床腫瘍部では、最新の治療を患者さんに提供するとともに、さらに効果の優れた治療方法の開発を試みています。

患者さんに参加していただいて、治療方法や診断方法が有効であるか、安全であるかを調べることを臨床試験と言います。 以下に挙げた臨床試験は、臨床腫瘍部が参加または企画している臨床試験の一部ですが、これらは全てより良い治験方法を開発するための研究であり、患者さんのご協力がなければ成し遂げられないことです。

臨床腫瘍部では、これら臨床試験や治験にも積極的に取り組み、日夜努力して、がん治療の発展にも貢献しています。 下記の臨床試験への参加をご希望の方は、臨床腫瘍部までご連絡ください。

「高齢者進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するドセタキセル単剤療法とカルボプラチン・ペメトレキセド併用後ペメトレキセド維持療法のランダム化比較第Ⅲ相試験」

75歳以上の進行非小細胞肺がんの患者さんに対する標準治療は、ドセタキセル単剤の化学療法なのですが、その治療効果はまだまだ十分なものとは言えず、よりよい治療法を開発しなければなりません。

75歳未満の進行非小細胞肺がんの患者さんの場合には「カルボプラチン」もしくは「シスプラチン」を他の抗がん剤と併用する治療が標準治療として行われています。

カルボプラチンとシスプラチンは同じような作用を持つ抗がん剤で、カルボプラチンの方が吐き気などの副作用が軽いことから、広く用いられています。 そこで私たちはカルボプラチンを用いた併用療法を高齢の患者さんに応用することでより高い効果が得られるのではないかと考えました。 しかし、カルボプラチンとペメトレキセドの併用療法は効果が高いことが期待されてはいますが、体にかかる負担、副作用などを含めて、 治療の長所や短所を現在の標準治療であるドセタキセル単剤と実際に比べたことがないため、本当にどちらが優れているのかは、わかっていません。

そこで、今回、特に75歳以上の患者さんについて、これらの2つの治療を比較し、標準治療である、「ドセタキセル単剤療法」にくらべて、 「カルボプラチンとペメトレキセドの併用療法」がはたして優れているのかどうかを確かめるために、この臨床試験が計画されました。

「化学療法未施行IIIB/IV期肺扁平上皮癌に対するCBDCA+TS-1併用療法後のTS-1維持療法の無作為化第Ⅲ相試験」

進行肺扁平上皮癌の初回化学療法は、非小細胞肺癌での研究結果をもとに、現時点ではシスプラチンやカルボプラチン等のプラチナ系薬剤と呼ばれる第3世代抗癌剤の併用による 種々の併用化学療法(Platinum Doublet)が肺癌診療ガイドライン2010年度版で標準治療として推奨され、日常臨床で広く実施されています。

しかし、未だにその生存期間に対する効果は十分ではなく、さらなる治療成績向上には化学療法の進歩、新しい治療戦略の開発が必要不可欠であるのが現状です。 そこで、1次治療としてカルボプラチンとTS-1の併用療法を施行した後に効果が得られた進行肺扁平上皮癌の患者さんを対象として、経過観察群に比べてTS-1の維持療法を行うことの有効性、 安全性を評価し、TS-1による維持療法が進行肺扁平上皮癌治療における有効な治療戦略であるかどうかを検証するために、この臨床試験が計画されました。

「EGFR遺伝子変異を有する切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌に対するゲフィチニブと胸部放射線治療同時併用療法の第Ⅱ相試験」

「縦隔リンパ節転移を有するIIIA期N2非小細胞肺癌に対する術前の化学放射線療法と手術を含むtrimodality治療の実施可能性試験」

「扁平上皮癌を除く進行非小細胞肺がんに対するベバシズマブを含むプラチナ併用療法施行後の増悪例における、ドセタキセル+ベバシズマブ併用療法とドセタキセル単剤療法の無作為化第Ⅱ相試験」

「上皮成長因子受容体遺伝子変異が陰性または不明である非扁平上皮非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ併用療法施行後、 維持療法として、ペメトレキセド+ベバシズマブ併用療法をベバシズマブ単剤と比較する第Ⅲ相臨床試験」

進行肺がんの診断が付いた方に最初に行う治療法(一次治療)のうち、それに引き続く治療が予定されている場合、初めに行われる治療法のことを「導入療法」と言い、 導入療法に引き続いて行う治療のことを「維持療法」と言います。

維持療法は、導入療法で得られた効果を維持することを目的として、主に副作用が少ない薬剤が使用されます。 この臨床試験の目的は、非扁平上皮肺がんに対し、標準的な導入療法と考えられているカルボプラチンとペメトレキセドの2剤併用化学療法にベバシズマブを併用する 治療法を4コース行った後の維持療法として、ベバシズマブ単剤での標準的な維持療法と、ベバシズマブにペメトレキセドを併用する維持療法のどちらが優れているかを 比較・分析し、より優れた治療方法を確立することにあります。

この結果が分かれば、どちらの維持療法が患者さんにとって利益があるのかが明らかになります。