林 龍二

臨床腫瘍学とは薬物療法を中心としてがん診療における標準治療の革新を探求し、 また全てのがん患者に必要となる支持療法・緩和療法についても開発を行う分野です。

従来は、「肺がんは呼吸器内科医、胃がんは消化器内科医、乳がんは専門とする内科医がいないため乳腺外科医が化学療法も担当……」 などのように、臓器ごとにがんの薬物療法が行われていました。

しかし近年、がん患者の増加と薬物療法の多様化により、新しい薬物療法の開発やそれを安全に行うための支持療法、 原発不明がんなど従来の枠組みでは対応できないがん診療を行う「臨床腫瘍医(Medical Oncologist)」が必要とされています。

がんは従来、疾患ごとの特徴に従い臓器別の専門家が診療にあたってきました。しかし、がんの分子生物学的解明が進むに従い、細胞内のゲノム異常が、がんの本体であり、その特徴は臓器を越えたものであることがわかってきました。また、各種がんに使用される薬剤もそのゲノム異常に従って開発、応用されるようになりました。したがって、診断、外科切除は従来通り臓器別に行い、一方で、薬物療法はあらゆる臓器に対するがん薬物療法の専門家が行うことがより合理的とする考え方があります。そうした観点から、当科ではがん薬物療法の基礎、副作用マネージメントを行っており、初期研修医にはそのエッセンスを学んでもらいます。

一方、がんという疾患は生命の危機をはらんでいるという意味で、肉体的苦痛だけではなく、精神的、社会的苦痛を伴うとされています。そうしたがん患者の肉体的、精神的苦痛に対処する医療として緩和診療があります。終末期医療のホスピスケアから始まった緩和医療ですが、現在では、がんの診断時点から様々な角度の緩和診療が行われるようになりました。このため、より専門的な知識とチーム医療の実践が求められています。当科は緩和ケアセンターの運営にもあたり、がん診療と並行して緩和医療を専門的に行っています。こうした緩和医療の基礎を習得するため、すべての研修医に当科で研修することをお勧めします。

がんは現代医療において最重要課題の一つです。がん診療に従事し、その発展に携わることは最もやりがいのある仕事と考えて診療にあたっています。研修医の皆さんには最先端の抗がん治療、患者の希望に寄り添う緩和医療を身につけていただきたいと思います。

「がん診療」について、何か困ったことがあった時にはいつでも気軽に臨床腫瘍部にコンサルトして下さい。
研修風景 研修風景