子どもたちの未来をつなぐ医療(3/3)

医者として、 当たり前のことを当たり前にやるために。

学会では経験談を持ちよっていつもでも語り合う。

聞き手 日々研究されているんですね。

第1外科診療部門 教授 芳村直樹

芳村 だから例えば学会なんかでも、どちらかというと、この領域の学会は何を議論しているかというと、あんまり学問がどうこうじゃなくて、こんな患者さんを経験して、こうやってみたらこうだったみたいな話が多いです。経験談の持ち寄りで、よその施設の経験を聞いてきて、そんないい方法があるんだったらやってみようとか、そういう感じです。学会にはたくさんの先生が来られるんですが、その人たちはやたらとオタッキーというか何というか、あれですけど、みんなあんまり遊びにいかんと学会場でずっと話し込んでいるんです。

聞き手 そうやって医療の質をあげているんですね。

芳村 今はたぶん、ここでの医療は世界の標準にそんなに劣ってないと思います。北陸地方では富山大学附属病院でやっているようなことをやれるところが他にはないんです。今は石川、富山、福井の東と新潟の西ぐらいは皆うちで面倒見ています。

聞き手 若い世代に対してどんなことを期待されますか?

芳村 学生は「芳村先生、忙しそう、忙しそうって言っているけど、おまえらもっと忙しなるぞ」って言っています。何のために医者になるんだということをやっぱりよう考えてほしいです。あとは、自分の住んでるところ(地元)の地域の人たちのために地元の医者になれと言っています。

富山には立派な人たちが育つ風土がある。

聞き手 最近の学生は昔と比べてどうでしょうか。

芳村 富山の学生は割とみんな志の高い立派な人たちが多いと思いますよ。本当にいい医者になりたいという気持ちを持っている人が割合いますね。今どきの若者はという感じはあんまりしないので、それは嬉しいことだなと思ってます。

聞き手 何が理由としては考えられるんですかね。

芳村 何となくですが、そういう土壌ができてるからではないでしょうか。風土というかね。もちろん地元の人の協力もあるんでしょうけど、それと、遊ぶところがあんまりないですからね。

当たり前のことを当たり前にやるには強さが必要。

聞き手 先生は富山にいらっしゃってどれくらいになりますか。

芳村 僕は9年目ですね。この春で9年になります。

聞き手 この病院の良い所をあげるとしたらどの辺でしょうか。

芳村 専門家がそれぞれの役割を果たすのがチームです。僕がここに来てびっくりしたのは、いろんな職種に一流の人がいっぱいいるところです。そこに最後に僕が乗っかってきただけのことなんですよ。一流が揃っていて、それがチームとしてちゃんと機能すればそんなに特別なことはしなくてもいいんです。当たり前のことを当たり前にやっていればいいと思います。

聞き手 社会的にもその「当たり前」を当たり前をやるのが難しくなってきていますよね。

芳村 そうですよね。だって、今こんなに北陸地方は医者が少ない、足りないって言われて結局困っているのは、それぞれの地域の住民でしょう。だから普通に考えたら、そこに僕ら何をせなあかんかって。要するに、医者を育てて地域の第一線病院で活躍してもらう。地域の皆さんが医者を必要としているのに、大学にだけ医者がいてどうするんだろうと。今、第一外科は思いきり人が少ないですね。もう出せるだけ(地域に)出しているから。患者さんは皆さん医者に来てほしい。だから一人でも出せる人がいたら出しています。
我々も必要とされている場所で仕事がしたいです。

聞き手 すごくシンプルですよね、考え方が。欲しいというんだったらあげればいいという話ですね。

芳村 こっちもそんなに、ない袖は振れないけど、とにかく大学では少人数で頑張れるだけ頑張って、やっぱり必要なところに人を出す。地域の人が求めているんだから。我々は別に当たり前のことを当たり前にしているだけなんですけど。

聞き手 病院長は「病院敷地の中に倒れてる患者がいたら、全部を救えと言われますよね。診療科や専門分野に関わらず全ての人を。

芳村 そうですね。というか私も医者なのでそうありたいと思います。