富山大学附属病院呼吸器外科
富山大学附属病院呼吸器外科

教育

富山大学呼吸器外科でのタイムライン

当呼吸器外科に所属する医師の、基本的なタイムラインを示します。

富山大学呼吸器外科でのタイムライン

医学生・研修医教育

私たちは、

  1. 一人一人に向き合う丁寧な教育を心掛けています。
  2. できるだけ早く一人前になれるよう、多くのチャンスを与えています。
  3. 世界での活躍を視野に入れた、一歩進んだ指導を行っています。

Wet labの一風景

高次臨床実習の写真

英文論文での報告

医学生・研修医のみなさんへ

若いあなたたちは、新しい世界が広がり、心が躍る毎日を送っていることと思います。これからどのような科を専門として進もうかと迷っている方も多いと思います。しかし、少し考えてみてください。最も大切なことは、医師という職業の本質です。

私は、長崎で西洋医学の授業を最初に行ったとされる、日本西洋医学の祖である“ポンぺの言葉”を座右の銘にしております。「医師は自らの天職をよく承知し、ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、病める人のものである。もしそれを好まぬなら、他の職業を選ぶがよい」というものです。さらに時代を遡れば、かの有名な古代ギリシアの医師ヒポクラテスも自戒を込めた誓約を行っています。富山大学医学部の建学理念は、「里仁爲美。擇不處仁、焉得知。」であり、論語のから取られています。最近は自分の専門分野でなければ診療しないという風潮が進んでいますが、やはり医学の根本は、まず患者の訴えを聞き、生命を守るという姿勢であると考えます。この姿勢を貫きながら、その上で専門を決めて欲しいと思います。

医師の本質と逆行しているようにも思われますが、医師においても生活の質(Quality of life; QOL)を求められる時代となり、働き方改革が叫ばれています。これはあまりにも医師の行う仕事が増えすぎたことによります。私は、看護師、理学療法士、技師などの医療従事者がそれぞれ責任を分担することが医師の働き方改革に直結すると考えており、できるだけ役割分担を行って職場環境を働きやすくしていく所存です。一方で、働き方改革によって労働時間が短縮しても医療の質は落とせません。この両立という難しい作業を、これからのみなさんは成立させなくてはいけないのです。

肺がんは日本において臓器別死亡数が1位であり、私たち呼吸器外科医は、命を救うという意味で最も必要とされる腫瘍外科医であると自負しています。手術では、拍動する肺動脈を切離するという、危険と隣り合わせの技術を習得しなくてはなりません。担当する手術は、肺の切除に始まり、縦隔、胸壁、心膜、横隔膜の切除再建、血管吻合や心房の切除、膿胸や縦隔の膿瘍ドレナージまで、広範囲にわたりバラエティに富んでいます。さらに呼吸機能の生理学、解剖学、周術期化学療法など、広い分野にも精通が必要です。一方で、緊急手術は思いのほか少なく、手術時間は3時間程度であり、医師としてのQOLが保てる外科でもあります。

さて、学生・研修医教育では、合理的な学習システムを確立させています。

臨床実習での症例検討(PBL)、呼吸器外科の歴史と最新のトピックス、研究の講義

動物の臓器を用いたWet labによる、技術の習得 (希望者)

国内学会での発表、国際学会への帯同、論文作成 (希望者)

医師としての取り組みは、医学生に始まり、確立した医師になってからも絶え間なく続くものですが、最も大切なものは、本人の志とモティベーションです。私の教室では、合理的に仕事を整理しながら、“里仁為美の精神を持つAcademic surgeon”を育成していく所存です。

ポンペの言葉

ヒポクラテスの誓

富山大学医学部記念碑「里仁為美」

大学院教育

私たちは、

  1. 幹細胞、動物を扱った移植再生医研究を行っています。(参照; https://www.organengineering.com)
  2. 生体システム医工学分野(http://pse.eng.u-toyama.ac.jp/bio7A)をはじめ、国内外の研究機関と積極的にコラボレーションしています。
  3. 企業と連携し、臨床応用を目指しています。

脱細胞化肺

Yale大学にて

鹿児島大学異種移植チームとともに

2020/1/16 日経産業新聞

大学院生・研究員のみなさんへ

臨床から研究に移ることは、全く違った世界に飛び込むという意味で、かなりのストレスだと思います。そしてその精神論も全く異なります。臨床では、教科書や過去の報告に基づいて、その教えの通りに正確に行うことが求められます。一方で、研究では疑問や命題に従い、その答えを自分で考えながら進めていかなくてはなりません。そのため、全く結果が出なかったり、自分と思ったことと逆の結果が出たりと、予想外の困難が発生します。つまり、“道なき道を行く”ことが研究です。

医学は日々進歩しており、そのベースにあるものが基礎研究です。実験した結果がそのまま医学の一部となっていきます。たとえ結果がでなくても、医学の根本を学ぶことは、疾患のより深い理解に繋がっていきます。さらに、国内留学や海外留学という新しい世界にも飛び込んでいけるかもしれません。

一生は一回きりです。貴重な大学院の数年間は、徹底して基礎研究に没頭しましょう!

2023年1月31日

文責 土谷