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高度医療最前線

より充実した医療を提供するために
「もやもや病」にもっと良い治療を提供したい 脳神経外科教授 里田敏

名前からは想像しにくいですが、れっきとした脳血管の病気です。大脳へ血液を送る頚動脈が頭の中で狭くなる、または詰まるため、脳の深い部分では血流が不足します。これを補うために細い動脈が発達して太くなり、異常な血管構造を呈します。その脳血管撮影像がタバコの煙のもやもやした様子に似ているため「もやもや病」と呼ばれていますが、正式には「ウィリス動脈輪閉塞症」という名称があります。この病気は私たちアジア人に多い傾向があり、また、発症の年齢分布では2つのピークがあり、10歳までの子どもは脳虚血や脳梗塞で発症する例が多く、30〜40歳代の成人では脳出血で発症する例が多く見られます。つまり、もやもや病は脳卒中の原因になる病気なのです。
最近は脳ドックでは見つけられない「無症候性もやもや病」や頭痛のみの症例も増えています。治療は脳卒中を予防する目的で開頭手術(バイパス手術)を行う場合と、MR検査を定期的に行い経過観察をする場合があります。
もやもや病には症状がないため、どう治療するかという問題があります。現在、私たち富山大学脳神経外科を中心に日本国内で「無症

候性もやもや病」の全国調査を精力的に行っており、その結果から患者さんにより良い治療を提供できればと考えております。また、当院ではもやもや病の患者さんを広く受け入れており、今年は外国からも患者さんを受け入れました。今後もより一層もやもや病治療センターとしてこれからも役割を担ってまいります。

笑顔で退院するルイス君
「遺伝性腫瘍」カウンセリングをはじめます 第二外科診療准教授 長田拓哉

がんと遺伝について

みなさんは病院を受診した時に、医師・看護師から、「あなたのご家族、ご親戚の中で、がんや大きな病気をされた方はいらっしゃいませんか」と尋ねられることがあると思います。これは家族歴といって、病気に遺伝的な関連がないかどうかを確認しています。遺伝するがん(遺伝性腫瘍)については現在も研究が進められており、その実態が次第に明らかにされています。

遺伝性腫瘍について

2013年5月に女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)であり、手術を受けないと75歳までに80%の確率で乳がんになる危険性があるということで、乳がんを予防するために両方の乳房手術を受けたことが公表されました。このニュースは瞬く間に世界中を駆け巡り、遺伝性腫瘍に関する議論がわき起こりました。

遺伝カウンセリングについて

ジョリーさんのような病気は、遺伝子検査を行うことで分かりますが検査を受けるためには、専門医による遺伝子カウンセリングが必要となります。検査するだけでなく、HBOCであった場合は、今後の検査や治療方針に関する相談や、家族・親族に同じ遺伝子を持つ方がいらっしゃるかどうかの検査等について、患者さん・家族と医師・看護師・カウンセラーが一緒に考えてゆくことが大切です。本院では富山県内で初めて、遺伝専門医、乳腺専門医による遺伝性腫瘍カウンセリングを始めます。家族・親戚に2 人以上乳がん、卵巣がんに罹った人がいる方、50 歳以下で乳がんに罹った方で遺伝子カウンセリングについてもっと知りたいと思われる方は、外科外来・産科婦人科外来で相談を受け付けておりますので、どうぞお気軽にご相談下さい。

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